この日の到来は怖かったが、そんなものは宇宙の摂理には何の関係もなく。
2月11日は淡々とやってきた。
大切な友人と新宿でライブビューイングを観る。
お芝居とショーは滞りなく進んでいく…なにしろ今回の雪組、一回しかリアルで観てないので、カメラワークで適切に抜かれると「あーここ、彼女だったのね」みたいなことは何度かあった。ためになりました。
しかし…。
和希そらほど安心して見られるスターがいるだろうか。
規則破り承知でいうが、その点ではトップスターや2番手よりも上だったと思う。他組も含めてね。
仮にアクシデントがあっても余力が残してあるからリカバリー可能。観客として、安心して舞台に身を委ねることができるひとだった。
声の響き、腕の使い方、脚の伸び…。
全てが「舞台に生きるべき人」だと語っていたと思う。無理がない。
いえ、影でたくさん努力されていたの知っています。だけどそれを感じさせない、観る側に負担をかけない演じ手だった。
このタイプ、意外と宝塚には少ない。だからきっと観ずにはいられなかったのだと思う。
階段降りての、最後のご挨拶。多くの方々が語っておられるので省略しますが、湿っぽくならないように努めて明るく、話題を選んだんだなーとしみじみ思いました。涙が爆笑に変わりましたね。
だいたいねー階段降り前に組長から呼ばれた時の「はい」という返事が力抜けまくっていて…なんかもう、そこいらで呼ばれたときのような、普通すぎる返事。こういう人なんだなーと(笑)。
もちろんそれは彼女一流の演技なのかもしれないけれど。
非常に多くの人が和希そらを惜しんだ。
それが本人にも伝わらないわけはあるまい。
どんな事情で今彼女が宝塚を去るのか、ファンにはわからない。単純な理由ではなく複合的な事情もあるだろう。本人とて、思うところがないとは誰が言えようか?
それを彼女はこんな風に明るく切り抜けたのかも…。
そしてまた、多くの人が予想するように、彼女を日比谷界隈の劇場で観る日は来るだろう(と、思いたい!あまりに惜しすぎる)。
トップスターだったわけではないからこそ、最強の脇として元トップスターと同じ板に付くこともできるかも、とも思う。願望を込めて。
それでも彼女の男役には二度と会えない。
「こんなにさよならを言うのがつらい人がいるなんて、僕は幸せだ」
というフレーズを引用して彼女は心境を述べたけれど、こんなに惜しまれる男役を観られた私たちファンも、得難い体験をしたのかもしれない。
…しれないのだが、やはりつらい…卒業公演の千秋楽は、豪奢な葬列なのだから。
さよなら、男役の和希そら。
いつかまた、逢えますように…演技者の和希そらに。
それにまで「さよなら」なんてどうか言わないでね。