感涙!パリオペラ座バレエ来日です! | Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

鑑賞は生中心主義。自分の眼でライブで見たことを中心に、語ろうと思います。


2024年2月9日18時30分公演「白鳥の湖」
オデット/オディール パク・セウン(朴世恩)
ジークフリート王子 ポール・マルク
ロットバルト ジャック・ガストフ

全配役見るような鑑賞猛者からは遠く、せいぜいプログラム別に一回か…と思ってしまう、海外カンパニーの高価なる来日公演。友人たちは、本命ではない回は5階を買ったりしますが(それでも1万円なんだけど)、私は目が悪いせいか、だめなんですよね、それ。
となると、一体誰を見ようかしらと考えまくった挙句に、磐石というか間違いない主役(=観たことがあって好みとわかっているダンサー)の日を選んでしまうことが多い私です。

なのですが、今回の「白鳥🦢」はパク・セウン&ポール・マルクの組を選びました。どちらもほぼ初見に近い。
ポールは、すんごく前にルグリか誰かがまだかなり下の階級の彼を、ピックアップメンバー公演で連れて来たのでよく覚えてる。その彼がエトワールになったんだなーと。
そして、パク・セウンはアジア人初めての、パリ国立オペラ座バレエのエトワール。並みいるフレンチスタイルのダンサーとフランス至上主義を押し退けまくって(←いや、知らないけど、イメージ)最上位を極めるひとの踊りって、どんななんだろう?と純粋な興味を優先しました。初見です。

そして私は、この日を選んだ自分を偉いと思った。
めちゃくちゃよかったです。
名前を知ってるエトワールがどんどん引退していって、最近ガルニエにも遠征できてなくて機会逃してて、淋しいなーと思ってましたが、新しいスターがまだまだいる!
そう思えて、目の前にふわっと花が咲いたように甘く明るくなった。

さて、まずはお目当てだったパク・セウン。
私はとてもよいと思いました。多分フランス人からすると、極めて優秀なエキゾチックダンサーなんじゃないのかなー。
身体はめちゃくちゃ細くて薄く、ほんとに「鳥」みたいで、細くても丸い胴体で嵩のある西洋人とは明らかに違う。(ジェルマン・ルーヴェは彼女が軽すぎてリフトしてる気がしない、とぼやいたらしい)
踊りの印象は、実は強靭なんだけど静謐。ポワントが非常に強くてバランス時間も長い。静かな中にもくっきりした表現がエレガントでした。
王子と踊ると、人間と鳥という「異種の出会い」な感じがして、これはこれでまた佳きかなと。
(まあ、一生オデットやってるわけにもいかないだろうから、他の役は違った風に踊るのでしょうが…)

彼女、そしてオニール八菜やギョーム・ディオップ(セネガル系)のエトワール就任を「多様性の象徴」えーとつまりはポリティカル・コレクトネスの延長?という向きもありますけど、それだけではないよね。
特にパリオペはコンテンポラリーにも重きをおいていて、それもカンパニーのアイデンティティの一角を築いているのだから、物語バレエがどうしたって西洋的容姿にアドバンテージがある(こりゃ仕方ない。出所が西洋なんだもの)のとは違う評価軸もあってしかるべきだと思います。

いやそれはともかく、ダンサーとしてのパク・セウン、非常に好みでした。キトリとかタチアナも観てみたい。

そして、ポール・マルクくんですよ!
いやーめちゃ好みのダンサーになってた。実にアカデミック!見ずにはいられない美しい爪先、柔軟な筋肉。バレエ教則本(そんなのあるんですかね?)まんまの正しい技術。知らぬ顔をして超絶技巧を優雅にやってのける。
グラン・ジュテなんて、いつまでも降りてこないかと思いました…それくらいふわりと長く美しく翔ぶ。いや、どの漢字がいいのかなー飛ぶ?跳ぶ?
オディールとのグラン・パ・ドゥ・ドゥのコーダは王子の連続グラン・ジュテで始まりますが、1回目でどよめきが起こり、2回目で拍手喝采、そして3回目が一番高い跳躍!

(写真はお借りしました。オデットとロットバルト、そして王子、ポール・マルク。これは終盤のシーンで、テキストで書いてるのは舞踏会での踊りです)

こんなこと本当は言ってはいけないかもですが、やはり小柄な男性ダンサーがくるくる身軽に飛ぶのとは違い、長く美しい脚が完全に開いて宙を切るさま、しかもいつまでも降りてこない…客席は興奮しますよね…なんか、ちょっとした奇跡を観てるかのような。

アフター一緒にした知り合いの一人は「今までみた男性ダンサーの中で一番上手い」なんて言ってました。いやまあ、それは個々の好みだとはおもうけど…こういうテクニシャンがまた、パリオペという美学の鉱山みたいな場所にいるから素敵なんですよね。

このカンパニーが持ってくるのは当然のようにヌレエフ版で、難しい割には(とにかくバタバタしてるので)音楽的でなく=あまりアーティスティックではなくて、ダンサーにとってはコスパ悪いなーと、踊りもしないのに思ってる私。ですがこの日はほんとにそれはどうでもよく、お義理ではなく早めに席から立って拍手してしまいました。
なんか嬉しくてうっすら泣いた。

美しいものには力がある。
美しさと強さは同じこと。

なんだか化粧品の広告みたいになってしまいましたが、そんな気持ち。
もうひとつのプログラム「マノン」は、引退間近のミリアム・ウルドブラム(大好きなので悲しい…)と麗しのマチュー組を見に。千秋楽なので盛り上がるだろうなー。今から楽しみです。