本年の舞台鑑賞おさめ。ふと思い付いてチケットを買いました。
会場に行ってみると入りは7割といったところでしょうか。あちこちでやたら挨拶している人がいたり、意外と男性客が目立ったりと、ご招待客多しという気もしました。
演目は「雪の女王」…カイとゲルダですね。名前の響きが他の外国の名前と違うので、小さい頃読んだときの印象は強く残っています。そして日本初演、もちろん観るのはじめて。さてその中身は…。
話は「眠り」に近いけど、筋の運びかたが「くるみ割り人形」に似てるように思いました。女の子が旅をして、いろいろな人たちに出会う。いいひとも悪いひともいて、それぞれが踊りを見せてくれる(このへんはくるみ)。そして最後には愛の力で魔法が解けるというもの(落ちは眠り)。
音楽は大層ポピュラーなクラシックの羅列で、ちょっと統一性がない感じ。特に1幕はその趣きが強くて気になりました。こどものためのクラシック、みたいなね。
衣装もありきたりというか微妙にオールドファッションだし、振り付けも同様、非常にクラシックで特徴が薄い。ダンサーはみな下手なはずもなく綺麗なんだけど…こりゃちょっと退屈か?と思いはじめていた1幕。
しかし、2幕で披露された男性ダンサーの群舞はスパルタカスみたいな迫力で、なかなか楽しかった!ここはボリショイか?
やはり身体のバネが凄いんですよね、この方たち。日本人みたいに揃ってはいないけど、量感のある身体でガンガン跳ぶ迫力は爽快で、また別のもの。
役の名前とかわかりませんが、山賊みたいな女性役もテクニシャンで怖くて、とってもよかった。
そのくせ、みんな脚は細いんだよなー。細マッチョな筋肉がつく遺伝子なのか、太くならない教育が行き届いているのか…。
そんなこんなで、ちょっとお値段高かったかなと思いつつ、まぁいいかと帰途につきました。
ウクライナは多くのバレエダンサーを生んだ国で、現役だとザハロワやらポルーニンやらサラファーノフやら、一流どころがゴロゴロ。ウクライナは英名「ユークレイン」なんだけど、なかなかいい響きだと思います。
以前どっかにも書きましたが、もう何年も前に(まだロシア連邦だった)ウクライナ共和国に行ったことがあり、当時は日本語でキエフと呼ばれてたキーウで、バレエを観ました。
クラシカルな劇場と、カリグラフィが美しい手書きのチケット(誰が書いてるのだろ)、演目は「森の詩」。
そして劇場外では、道行く普通のひとたちの脚の長さに驚いた…。
これは私の感覚ですけど、大柄なのに俊敏に踊れるのがロシア民族…というか東スラブの人たちの特性みたいに思う。もともと踊りに向いているのかな?寒いから、身体を暖めるためにとびはねてた?
フィギュアスケート記事のライターをしている友人に言わせると、この民族は太ももの内側のナントカ筋?が強くて、ジャンプ力に優れているんだそうです。不確か情報すみません。
バレエはイタリアで生まれてフランスで育ち、そこで堕落してしまったのがロシアで生き延びて、ディアギレフによって逆輸入された…というのが通り相場。だけど、東スラブの方々は「私たちに似合いの芸術が来た!」と喜んだんじゃないんでしょうか。欧州に戻ってきたバレエは、ロシアふうに味付けされて、かなり別ものだったのかもしれません。
私は今も、ロシア・バレエは特別なものだと思っています。典雅なパリオペも、ドラマティックなロイヤルも、哲学をコンテンポラリーバレエにしたドイツも、それぞれ素晴らしいのだけどね。。
それにしても…ウクライナは戦争をしているというのに、どうして国立のバレエカンパニーを海外へ送れるのだろう?
私は母から太平洋戦争下の国民の悲惨さを聞いて育ったので、そのへんがよく理解できない。戦争の仕方が変わった…というより、違うのでしょうね。総力戦ではない。
イスラエルとハマスにしたって、「休戦」ができるくらいですものね、なんでそれを「停戦」にしないのか、わけわかりません。下手に降りちゃうと大衆の支持を得られず権力を喪うってことでしょうか?だから決着がつくまでやめないの?
しかし、しばしハーフタイムはさんでさて再開、なんて、スポーツみたい…殺し合いなのに。だったら市民の迷惑かからないところ(月とか)で、職業軍人だけで好きなだけやってくれないだろうか!
情報が溢れてるのにどこかリアルさはなく、私のアタマは結局からっぽのような気がします。石垣りんさんの言うとおりだわ…。
来年のウクライナにどうか平穏が訪れますように…。