小説もまっ青な実話「ボニーとクライド」 | Gwenhwyval(グウェンフウィファル)の舞台日記

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鑑賞は生中心主義。自分の眼でライブで見たことを中心に、語ろうと思います。

2023年2月19日11時公演


雪組新トップコンビのプレ御披露目。御園座まで行って参りました。

ここんとこしばらく雪組はコンビ同時退団が続いていたので、咲ちゃんタイプのトップさんが相手役を代えるとはなんとなく思ってなかった…やはり何かイレギュラーなことがあったのかなあ…とかとか。まあもはやどうでもいいのですが。


「俺たちに明日はない」「凍てついた明日」など映画や舞台にもなった、ボニーとクライドの物語。

「明日」の不在・凍結は「刹那」の比喩か。

クライム・ノベル(フィルム・ノワールでもいいのですが)って読んだり見たりするの、なかなかしんどい。そこまで強い焦燥や深い絶望、怒りをおこす火種が、私に内在していないのかなーとか思ったり(なんか情けないような…)。

だけどこのジャンルに根強い人気があるのは…どこかひとの本能の暗い部分を掻き立てるものがあるのだろう…ですよね?


当作品では、主役二人の「有名になりたい」「人気ものが憧れ」という動機がわりと強めに描かれていて、現代のSNSでの承認欲求とほぼ変わらない。これもまた人間の本能なのであろうかと。

ボニクラの解説でよく言われる、義賊っぽさというか、不況や格差への不満が彼らの人気に繋がった…という面の描写は薄かったように感じました。

ラストシーンから始まり最初に戻って円が繋がるという仕立ては、余韻があっていいなと思いました。どこかで、二人がりひりひりしながら、いまも逃げ続けているような。


二人目の相手役を迎える咲ちゃん。

歌は蒼穹以来、安定感を増したように思えます。メロディアスというより、複雑なワイルドホーンの楽曲にがっつり向き合ってました。お芝居は、もすこし虚無な雰囲気があったらさらによかったかも…どっちかというと陽性なんだよね、彼女。いやでも、立ち姿のかっこよさはさすがです。


夢白あやは格別に美しい。ボニー役の前髪のあるボブヘア(ボニー本人はブロンドでもボブでもないみたいなのに?)よりも、フィナーレのアップスタイルが、私は好きだな。着こなしも美麗で、となみ以来のロイヤル美女だと確信。

歌も、まだ中音域迷子がなくはないけど、高音は上達していると感じました。娘①としては及第点でしょう。

お芝居も「サパ」のミーナみたいな、思い詰め系似合う。咲ちゃんの陽性に対して愁いを備えているので、これからどんなコンビになっていくのか…。

これからの各組娘①は、かなりお姉さん風味かと思えば少女っぽかったりいつまでもディズニープリンセスだったりと、なんだか王道タイプいない(私見です)ので、私としては夢白さんに期待するところ大です。バレエの基礎があるもの好き❣️


かずきそらくんは、使われ方もったいないという話もありますが…うーん、咲ちゃんのお兄さんに見えないのよねー私には。いえもちろん、なにもかも上手いです。一番素敵だったのはフィナーレの歌手(本公演以外でもそういうのかな)だったような。

出てないけどあーさとの一番の芸風の違いは、あーさがいつもひたむきなのに対して、そらくんは絶妙に力が抜けてるところですよね。そう見えるだけなのかも知れないけど。


そして野々花ひまりちゃん、芝居上手い。なんでまともそうなのに仲間に入ってしまったんだろう。私にとって彼女の行動が「不条理」のしるしみたいでした。

何回でも書くけど「ドン・ジュアン」の「おかあさま!」にはじまり、「シティハンター」の記者とか(名前忘れた)とか、ぶっ飛んだ役も寒くならずにこなす彼女。いいなー。


咲城けいちゃんはかなり重要な役で…いい扱いですね。しかるに、まだお顔が覚えられなくて…ごめんなさい。ザ・宝塚なマスクだからかな?

スーパーウルトラ御曹司かせきょー、今回はそこまでスポット当たらずな役だったように思います。学年としては順当ではあるが…。


あとは、花組でいうとビックポジのあすくん。今回もシンガーでした。ただ、昔から思ってるのだけど、彼女ってロングトーンが細いというかあと一歩安定しないのよね…他は素晴らしいのに。なぜだ。


アメリカを象徴する、銃とクルマが副旋律を奏でる物語。後味はトホホだけど、くっつけてくださったミニショーでなんとか立ち直り、御園座を後にしたのでした。

次回作のポスターなかなか綺麗だけどどんなんかなー(謝先生とはあまり気が合わない私…)。