
2019年4月15日11時公演
ゆきちゃんの姿を見るのは、これが最後。
そう思いながら日比谷へ足を運びました。
ゆきちゃんを初めてしっかりと認識したのは、蘭壽さん退団公演の『ラスト・タイクーン』(2014年3~5月)だと記憶します。『復活』(2012年1~3月)の新公も見たような…気がするんだけど…(娘では3番手格の役だった月野姫花ちゃんの役)あまり覚えてない…。あまりに本役と持ち味違いなのでへーと思ったような?いや、人から聞いた気もするし、あやふやです。このとき姫花ちゃんは卒業だったので、素敵なシーンをもらっていたのですよね。なんと懐かしい。
と、早くも話がそれかかるけど、ゆきちゃんの話。お芝居『ラスト・タイクーン』ではヒロイン蘭乃さんの友人エドナ役で、なにこの達者な子?と。ショーでの『少女夢眩』では夢々しいみりおさま(&獰猛なれいちゃん)と組んでダンスだけで「ひゃーうまい…」と魅せてくれました。エトワールまでやってのけ、ここで一気に私の脳の中で前線に。
この頃は桜一花さんの役をやることが多かったみたいですね。ヒロインではなく老け役まではいかない、優秀な脇。
いつどこで何を見ても間違いのないスキルの持ち主なのですっかりお気に入りの娘役さんになり、「ゆきちゃん、好き」とか言うたびに周りの反応は「うんうん、うまいよねえ、ほんと。でも…」(トップ娘用ではない)というものばかり。そしてそれは別箱ヒロインや理事の相手役になってもあまり変わりませんでした。
天下のみりお様の相手役として発表されたときには、みんな驚きを隠せなかった。
そしてそれは…大成功をおさめた。
その後のみりお様花組の快進撃はご存じの通りで、ゆきちゃんはときにヒロインとしては地味過ぎるくらいの役も、お手本みたいな『分を弁えた』居方で演じ。
一番うなったのは『サンテ!』かな。
相手役としては寸分の狂いもない寄り添いダンスを見せながら、いざ解き放たれると「エイト・シャルマン」ではだれも寄せ付けないかっこ良さ!
ああ、彼女の実力はこれなのよ、と痛快だったのをくっきりと覚えています。
(多分、ふたりで踊ってるときには20%くらいの力で揺れてますよね)
この封印と全開は、卓越した技術あってのものだと思います。
それでも彼女の功績は、天下の明日海りおの開花を促し、大輪の花を咲かしめたこと。
みりお様より一足先に卒業するのも、最初から決まっていたのだろうと想像します。
そんなゆきちゃんもようやっと『カサノヴァ』では持ち味を出せているようで、元気いっぱい花いっぱい。お歌もたくさん、衣装も素晴らしいものばかりだし、こちらまで彼女の幸せに伝染しそうです。
若干元気よすぎるとことか、コブシを聞かせがちな歌が演歌一歩手前まで行ったりするとことかあるけど、もはやリミッター外してると思われ、それもまたよし。
(20世紀号の彼女は、最初から外してました…😅)
本当にゆきちゃん、よかったね。
ベアトリーチェとは『永遠の女性』を意味する名前。あなたは明日海りおにとって忘れられない娘役になったのです。
思えば「エドナ」の新公役はきーちゃんでした。どちらも当時は「別格風味」の新進娘役だったのです。ほんの少し前のことなのに、いろいろと景色は変わりましたね…。
女性を取り巻く環境も変わったし、宝塚の客入りも変貌しました。
『自立する娘役』が抜擢されるトレンドですが、そんな中でゆきちゃんの後継はまた別の持ち味。
これからもいつ何が起こるかわかりません。
でも私は、ゆきちゃんのこと、みりおさまの添え物としてではなく、いつまでも覚えていたいと思います。極めて優秀な技術をもちながら『役割』に徹したゆきちゃん。それは(私にはできないけれど)ひとつの生き方なんだと。