雑話233「フェルメールの幻の名画」
今から10年前の2004年7月7日、フェルメールの作品だとされる絵画がオークションに出品されました。
「ヴァージナルの前に座る女」と題された作品は、縦が25.2cm、横が20cmしかない、とても小さなものです。
しかし、フェルメールといえば、その作品数が少ないことで有名で、当時確認されていたものはわずか36点しかありませんでした。
実際、19世紀から見ても、フェルメールの作品が美術品市場に出ることは非常に稀で、それまで知られている作品は、全て美術館に収められていました。
つまり、「ヴァージナルの前に座る女」は、フェルメールの全作品のなかで唯一売り物になる可能性のある個人所有だったのです。
ヨハネス・フェルメール「ヴァージナルの前に座る女」1670年頃
実は、この絵画、フェルメールの研究家たちの間では、第2次世界大戦の頃には既に広く知られた存在でした。
しかしながら、有名なファン・メーレンの贋作事件があったこともあり、著名な研究家たちは、この作品を偽物と考えていました。
その後の1993年に本格的な調査が開始され、10年という長期に渡る研究の結果、著名な研究家で構成された調査チームはこの作品をフェルメールの作品だと結論付けました。
真贋の決め手のひとつは、以前にブログでもご紹介しました、フェルメールが下塗りに使っていた当時非常に高価だったラピスラズリを原料とする顔料が、壁の部分の下塗りとして使われていたこと。
もうひとつは、この作品のキャンヴァスがルーヴル美術館所蔵の「レースを編む女」のそれと同一の生地から作られたことでした。
ヨハネス・フェルメール「レースを編む女」1669-70年頃
さて、注目のオークションでは、この貴重な作品は一体いくらで落札されたのでしょうか?
事前の落札予想価格は300万ポンドと控えめでしたが、7人の入札者で競られた結果、1624万5600ポンド、日本円で約32億5千万円で落札されました。
市場関係者によると、もしこのフェルメールの作品が、これほどいわくつきでなければ、これよりもはるかに高い額で落札されたであろうと予測しています。
因みに、現在でもこの作品の真贋について、異議を唱える研究者もいますが、概ねフェルメールの真作として受け入れられているようです。


