絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話 -37ページ目

雑話241「儲かる絵画?!」

画商をやっているとよく聞かれるのが、「これから値段の上がる作品を教えて!」というものです。


今週は美術品で一儲けしたいという人のために、投資家の注目を集めている芸術家をご紹介しましょう。


ルーマニア出身の画家アドリアン・ゲニエは、祖国のクルジュ・ナポカを拠点に活動していますが、すでに世界的に売れています。


アンドリアン・ゲニエ

噂では、あらゆる種類の投資顧問が、前回の個展を行ったベルリンの画廊に、入手困難な彼の作品を手に入れようと嘆願しに行ったとか。


ゲニエの作品は、パリのポンピドゥー・センターに所蔵されいますし、また世界的な億万長者で、有名なコレクターでもあるフランソワ・ピノー氏も彼のファンの1人です。


そんな彼の作品が先月の30日にロンドンで開催されたオークションに出品されました。


「偽のロスコ」と題された作品は、キリスト教の聖人である、聖大アントニオスが巡礼の途中で悪魔から様々な誘惑を受けたという伝説を題材にしています。


アドリアン・ゲニエ「偽のロスコ」2010年

一見すると、全く宗教的には見えない画面の中央で、ソファに座る人物はゲニエ自身です。


うつむいたゲニエの横には、一目でマーク・ロスコの作品だと分る絵画が置かれています。


ここでの誘惑は、ゲニエが敬愛するマーク・ロスコのように描くことなのです。


聖大アントニオスとして描かたゲニエは、美術の歴史で繰り返されてきた、他人の作品を自分流にアレンジして新たな作品として復活させるという伝統に誘惑される偽物の芸術家の将来的な苦悩を暗示しているのです。




このゲニエの姿をよく見ると、身を捩りながら苦悶の表情を浮かべて嘔吐しています。


この身悶えしている芸術家は、諺を引用した聖書的な語呂合わせでもあります。


”犬のように嘔吐物に戻ってくるものは、愚行を繰り返す愚か者である。”


さて、「偽のロスコ」は事前の予想では、25万ポンド(4350万円)~35万ポンド(6000万円)くらいで落札されるとされていました。


しかし実際には、予想価格を大きく上回る142万6500ポンド、約2億4800万円で落札されました。


今回のオークションの結果を受けて、ゲニエの評価は別次元のものになりました。


コンテンポラリー・アートのオークションは、ウォーホルや、フォンタナ、リヒターなどのほんの一握りの金になる芸術家に大きく影響されます。


ゲニエが”投資向きの人気銘柄”などと呼ばれる彼らの仲間入りを果たすのもそう遠くない話ではないでしょうか?