雑話253「オルセー美術館展①」
現在、東京六本木の国立新美術館で開催中の「オルセー美術館展」に行ってきました。
印象派が活躍した当時の作品がずらり並んだ展示会場にいると、まるで19世紀のフランスの公的美術展であるサロンの会場に迷い込んだかのような錯覚にとらわれました。
また、出品作品はどれも素晴らしく、展覧会の注目作品となりえるような作品が多数含まれていて、ご紹介作品を選ぶのも困る程です。
そこで、この展覧会につきましては、個人的に気になった作品を数週間に渡ってご紹介することにいたします。
まず最初にご紹介するのは、エドゥアール・マネの「笛を吹く少年」です。
エドゥアール・マネ「笛を吹く少年」1866年
入場してすぐの最初の部屋にかかっているこの作品は、その大きさと鮮烈な赤い色でひときわ目立つ存在です。
モデルの少年は、皇帝近衛部隊の選抜歩兵の笛吹として描かれています。
一見、写真のようにリアルに描かれているようですが、近づいてよく見ると少年の衣服はベタ塗りされた大きな色面であることに驚かされます。
このような遠近法の欠如は、当時としては、かなり先鋭的な処理で、サロンの審査員には理解されずに落選の憂き目にあっています。
しかし、当時の絵画では当然と思われていた明から暗へのなだらかなグラデーションは、屋外では見られません。実際は、マネが描いたように、太陽の光は強烈な明暗のコントラストを作り出します。
つまり、マネはただ、伝統的な技法を捨てて、自分が見えるように描いただけなのです。
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マネの作品が並んでいる会場の次に現れるのは、19世紀に活躍したレアリスムの画家たちの作品です。
有名なミレーの「晩鐘」もあるのですが、ここではジュール・バスティアン=ルパージュの「干し草」をご紹介したいと思います。
ジュール・バスティアン=ルパージュ「干し草」1877年
バスティアン=ルパージュは19世紀のパリで活躍した画家で、農民の生活を描いた作品で有名です。
この「干し草」は1878年のサロンで最も美しい絵画だと評され、彼のもっとも有名な作品となりました。
画面手前に座っている若い農婦は、農作業を終えてへとへとに疲れ切った様子です。
腕をだらりとさせ、汗ばんだ赤い顔をしています。まなざしは一点に据えられていますが、何も見ていません。
農村画家の先輩である、ミレーやブルトンの薄明りを使った画面とは対照的に、バスティアン=ルパージュは陽光に満ちた広い風景のなか、印象派から受け継いだ光を受け、のびのびと声を上げる人物を配しています。
この作品については画集より知っていましたが、実際に見た少女の肌は、思っていたよりもはるかにみずみずしく描かれていました。
その姿は、陽の光を受けて輝く周りの干し草とともに、この絵画に宝石のような美しさを与えていました。




