絵画BLOG-フランス印象派 知得雑話 -21ページ目

雑話257「ボストン美術館展」

現在、京都市美術館で開催中の「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」に行ってきました。


京都市美術館正面

本展は、19世紀後半から20世紀前半にかけてヨーロッパで大流行した日本美術が、どのような形で西洋美術に影響を及ぼしたかを、双方の作品を比較しながら検証していく形式になっています。


この展覧会の最大の注目作品は、モネが日本の着物を着た妻のカミーユを描いた「ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)」です。


クロード・モネ「ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)」1876年

この作品の展示会場に入った途端、目の前にそびえ立つ色鮮やかな着物を着た女性像の迫力に圧倒されます。


実際に作品を見るまでは、金髪の女性が不似合いな真っ赤な着物を着た、悪趣味な作品と思っていましたが、目の前の着物の見事な描写に驚きました。


特に、衣装から飛び出してくるかのような武者の刺繍は、モデルのカミーユから主役の座を奪い取るくらいの物凄い存在感を持っています




さて、カミーユの髪は元々黒褐色でしたが、ブロンドにすることにより、彼女を取り囲む様々な日本の品物との差異を強調しています。


誘惑するように身をひねったモデルと、打掛の鮮烈なデザインを強調した構図は、浮世絵師たちが描いた花魁や女形を称賛したものでしょう。


また、当時フランスでは、日本の衣装を身にまとった西欧のモデルたちを描いた思わせぶりな絵画が流行しており、官立のサロンでも主要なテーマの一つとなっていました。


この頃のモネは深刻な負債問題を抱えており、資金の潤沢な買い手を求めてこの題材を選んだとも考えられます。


モネと同じく、日本の美に傾倒した画家に、フィンセント・ファン・ゴッホがいます。


本展に出品されている「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人」は、パターン化された背景の装飾、鮮烈な色彩、そして線の動きが織りなすダイナミズムにより、多大に情感的な力を得ています。


フィンセント・ファン・ゴッホ「子守唄、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン夫人」1889年

これらの特徴は、国貞・広重の「当盛 十花撰 夏菊」にも共通してみられる、浮世絵の特質を思わせるものです。


ルーラン夫人の背景となる、渦を巻くような、生命力すら感じさせる花模様の壁紙はほとんど絵画全体を支配するかのような存在感で、同時に作品の表現性を高めており、その様子は国貞の浮世絵の背景を鮮やかに彩る菊の花のようです。


歌川国貞(三代豊国)・歌川広重「当盛十花撰 夏菊(二代目沢村訥升、初代沢村由次郎)」1858年

ファン・ゴッホは装飾的要素と色彩、そして線の表現を用いて、人物の表情に語らせることなく、母性とその慈しみを描き出そうとしています。


ルーラン夫人の組み合わせた手の中に握りしめるロープは、この絵を観る者の側に位置するはずの、彼女の娘が眠る揺りかごをつなぎ止めているものです。


それは国貞の、画面下部から垂直に伸び、右手の役者が握っている帯状の形態に似ています。


母と子の親密な瞬間という題材は、また浮世絵における定番であり、ファン・ゴッホの肖像画に込められた物語性にも、インスピレーションを与えたといえるでしょう。




展示は絵画だけでなく、日本美術から影響を受けた版画や工芸品と広範囲の分野に及び、当時のジャポニスムの影響力の強さを忍ばせます。


また、印象派に多大な影響力を与えた浮世絵なども展示されていて、改めてその鮮やかな色調や大胆な構図に驚かされます。


ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展

〔京都展〕

2014年9月30日~11月30日

京都市美術館


〔名古屋展〕

2015年1月2日~5月10日

名古屋ボストン美術館