いまや押しも押されもせぬ作家となってしまった久世光彦さん。
私にとっては、テレビドラマ「時間ですよ」や「寺内貫太郎一家」でのテレビマンのイメージが強い。
そのせいか、久世さんの小説は、テレビドラマを観ているように目の前に映像がぱーっと拡がっていく。
文字を映像に創り上げていく才能は、そのまま、映像を文字に変換していく才能でもあるらしい。
テレビ業界から、文学界に足を踏み入れた作家は多く、向田邦子、伊集院静、鎌田敏夫、なかにし礼(作詞家)、野沢尚などがいる。
そして、テレビマンは、人を笑わせながら泣かせるのが巧いのである。
小説を読んで泣いたのは久しぶりだ。
読み始めてすぐに気がついたが、内容は太宰治をモデルにした朽木という作家と、15歳の少女さくらとの交流を、少女の一人語りで綴られたものだ。
何の予備知識もなく、こういう本に出会えたことは悦びである。
15歳の少女に見事に化けられる久世さんには舌を巻いたが、これほど繊細な少女のような神経で、よくTV業界を生き抜いてこられたものだと感心した。
久世さんは、江戸川乱歩をモデルにした作品も書いていらっしゃるが、実在の人物をモデルにしたストーリーの意外性と想像力は、素晴らしいものである。
生意気を言わせてもらえば、「謎の母」という題名がどうも気にいらない。この作品の内容の素晴らしさが表しきれていない気がするから。
昭和の薫り高き作風と感性は、向田邦子に似ているからだ。
といったら、怒りますか?
それとも、苦笑いなさって下さいますか?
再び、向田さんの世界に出会えた。
そんな気がして嬉しいのです。。。
- 久世 光彦
- 謎の母
- 久世 光彦
- 一九三四年冬‐乱歩






