与謝野晶子というと、弟に宛てた「君死にたもうことなかれ」という反戦詩が有名だけれども、大胆で官能的な詩を詠みあげたことでも有名である。


やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君

乳ぶさおさへ神秘のとばりそとけりぬここなる花の紅ぞ濃き

くろ髪の千すじの髪のみだれ髪かつおもひみだれおもひみだるる



旧仮名つかいは読みにくいけれど、このレトロ感がなんともいえずにエロティック。
しかし、写真を見る限りでは、地味な印象の女性である。

詩人の先輩である与謝野鉄幹と不倫の末に結ばれたところは、前述の松井須磨子カミーユ・クローデル に似ている。しかし、晶子の場合は鉄幹と正式に結婚して子供を12人も産んでいる。(驚)

どちらかというと女好きで軟派な夫・鉄幹には相当苦労したに違いない。

けれども、その嫉妬の苦悩が晶子の女の情念と情熱と詩の才能を開花させたのかもしれない。

今でこそ、与謝野晶子くらいの活躍ぶりは珍しくもないけれど、明治生まれの女性として、閉ざされた社会の中で、道ならぬ恋を成就させ、5万首とも言われる詩を残し、小説や評論も書き、源氏物語の現代語訳まで出したエネルギーは凄い!

子供を12人も産みながら、夫に対して「恋」し続ける情熱は、並大抵のものではない。
お蔭で、結婚後の鉄幹は、晶子にエネルギーを吸い取られてすっかり影が薄くなってしまったかのようだが、晶子は妻としても鉄幹を懸命に立てて尽くしたらしい。

精力的な人生を送った晶子は、鉄幹の死から7年後、64歳の幸福で充実した生涯を閉じた。
「伝説になった女たち」の中では珍しく、女の人生をとことん全うした稀有な女性である。



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2007-06-21 09:31:51
過去記事なので、しばらくしたら日付を戻して再公開します。