42歳の彫刻家ロダンと恋に落ちたカミーユは、潤んだ目をした19歳の少女だった。

<なぜあの人だけが、こんなにもわたしの心をとらえるのだろう。

なぜほかの人ではいけないの?あの人よりも、もっとやさしい人が他にいる。

わたしを愛し、わたしだけを見つめてくれる人が、必ずいる。
分かっているのに、なのになぜ、あの人のことばかり考えて、こんなにも思い悩むのだろう。
昨日も今日も、たぶん明日も・・・・。>


悲恋と呼ぶにふさわしい恋。。。

年齢差。

師と愛弟子。
三角関係。

大人の男の狡さが分かっていても、抑えられない気持ち。

よくある男と女の恋でさえ、当人たちにとっては、世界にたったひとつの大恋愛なのだから。

オーギュスト・ロダンには、婚姻関係は結んでいないものの、20年も連れ添った糟糠の妻とも呼べる女性と子どもがいた。
若く美しく情熱的なカミーユと、ロダンのすべてを受け入れて待つだけの妻・ローズ。
愛人と家庭との間で揺れる男の姿は、どうしてこうも似通っているのだろう。

熱情か安らぎか。。。
結局ロダンはローズの元に戻っていった。

ロダンの弟子であるカミーユが、愛を捨て芸術に逃げ込むことさえも世間は許さなかった。

カミーユの芸術的才能は、師であり、恋人であるロダンの模倣としか見て貰えなかったのだ。
恋の苦悩と芸術との葛藤に苦しみ、じょじょに彼女の精神が蝕まれていく。


そして発狂。
パラノイア精神病の解釈妄想病。

30年間に及ぶ精神病院での幽閉生活で、いったい彼女は何を夢見たのだろうか。

哀しいまでに官能的な作品を残して、恋に殉じたこの人の名を知る人は少ない。








レーヌ=マリー パリス, エレーヌ ピネ, Reine‐Marie Paris, H´el`ene Pinet, 南條 郁子, 湯原 かの子
カミーユ・クローデル―天才は鏡のごとく
ジル・ネレ, Mitsuyo Nakamura, Yuko Suzuki
オーギュスト・ロダン―彫刻と素描
ジェネオン エンタテインメント
カミーユ・クローデル


山崎 洋子
「伝説」になった女たち