「ハンドパワーでどんな病気も治る」と勧誘されてセミナーの受講料などを騙し取られたとして、元会員らが主催者に損害賠償を求めた訴訟の判決が福岡地方裁判所であった。(福岡地裁令和6.7.24)

 

判決は、主催者に約2240万円の賠償を命じた。

この判決で注目すべきことは、本件における消滅時効(民法724条)の成否についてである。

 

まず、被告法人及び被告Uは、消滅時効(民法724条)につき、アースハートが、アースハート訴訟において敗訴した結果は、平成28年6月頃から、弁護団の広報誌、インターネット上のニュースサイトに掲載されており、原告らは、遅くとも平成30年9月22日までに、損害及び加害者を知ったなどと主張する。

 

そこで、平成29年第44号における改正前の民法724条(改正後の民法724条1号)にいう「損害及び加害者を知った時」とは、

 

「被害者において、加害者に対する賠償請求をすることが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知った時を意味すると解するのが相当である。」とした。

 

証拠のよれば、平成28年2月1日付けのインターネット上のニュース記事において、アースハートが、アースハート訴訟において敗訴したこと、被告法人がアースハートの事業を引き継ぎ、アースハートと同様のセミナーを行っていることが掲載されていたが、

 

当該記事は、主に被告法人による建物使用の違法性について指摘するものであり、被告法人の各活動とアースハートの各活動との具体的な類似性を指摘するものでなかったと認められる。

 

以上の事実によれば、仮に、原告らが上記記事の存在を認識していたとしても、原告らにおいて、被告法人のハンドセーリングセミナー等に関する各活動が、

 

ハンドセーリングセミナー受講料等の金員の取得に向けられた有機的に関連した社会相当性を欠くもので違法であると判断するに足りる事実についても認識したものとは認められない。

 

そうすると、「原告らは、上記の時点において、被告法人に対する損害賠償を請求することが事実上可能な状況の下に、それが可能な程度に損害及び加害者を知ったとまでいえない。」として、消滅時効の成立を否定した。

 

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