架空の妹になりすまして戸籍をつくり、マイナンバーカードをだまし取ったとして、私文書偽造罪(刑法159条1項)・同行使罪(刑法161条)や詐欺罪(刑法246条)などに問われた女性への判決公判が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和6.5.28)

 

判決は、懲役3年、執行猶予5年の有罪とした。

判決内容は以下のとおりである。

 

まず、本件各犯行は、被告人が、Aという架空の妹になりすますため、同人の戸籍等を得ようと考え、弁護士や各関係機関職員らに対してAが存在するかのように振る舞い、

 

同人名義の就籍許可の家事審判申立書から始まり、各申請書類等を偽造し、住民基本台帳ファイルや戸籍情報システムのデータ記録に同人に係る不実の記録をさせた上、

 

同人名義の国民健康保険被保険者証、個人番号カード及び運転免許証を入手するなどした事案である。

 

被告人は、Aの就籍許可を得るために、Aの詳細な生い立ちを設定して「被告人」と「A」とを使い分けながら弁護士や家庭裁判所職員らに対応し、内容虚偽の書面を資料として示すこともしており、大胆な一方で周到さもある。

 

無戸籍者が就籍するために設けられた生徒を悪用し、戸籍や住民基本台帳といった社会の基幹に関わるシステム上に架空人を作り出した上、社会生活上でも実際にAとして就労し、

 

同人名義の国民健康保険被保険者証、個人番号カード、運転免許証といった社会的信用性の高い各種の公的証明書の取得までしたものであり、身分証明制度の根幹を揺るがす悪質な犯行である。

 

犯行動機は、自分の生年月日よりも25歳遅く生まれた架空の妹になりすますことで、年齢で不当な扱いを受けることなく働きたかったというものであり、

 

「犯罪の隠ぺい等の違法な目的の達成にあったわけではないが、そのことを踏まえても、被告人の刑事責任は軽いものではない。」としている。

 

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