補助金の不正受給などを内部告発したことにより解雇するのは違法であるとして、漁協の元職員が地位確認と賃金などの支払いを求めた訴訟の判決が水戸地方裁判所であった。(水戸地裁令和6.4.26)
判決は、解雇を無効とした。
判決内容は以下のようになっている。
まず、本件補助金に関連する、平成25年から平成30年までの被告における出張経費に関し、1.自家用車で高速道路を使用した出張につき、鉄道普通券の費目が計上されている出張命令書、
2.飲食代が出張手当と別に計上されている出張命令書、3.所定の枠外に手書きで使途不明の金員の支払について記載されていた出張命令書、4.交通費が計上されていない出張命令書が複数存在したこと、
原告Aは、かかる出張命令書等を資料として、被告の本件補助金に係る出張経費の処理が不適切であるとの旨茨城県警察に申告したことが認められる。
そのうえで、上記4につき、出張当時の被告の旅費規程において、被告所有の自動車等による出張については交通費を支給しないこととされていたことが認められ、
原告Aにおいて、旅費規程を確認することで、出張命令書に交通費が計上されていない理由を把握すること自体は可能であったといえるが、現にそのことを原告Aが確認していたとの事情はうかがわれない。
加えて、被告所有の自動車による出張であることを理由に交通費が計上されていないのかは、出張命令書の記載自体からは明らかではなく、
他にも本件補助金を不正受給していると疑う契機があったことに照らせば、交通費の計上のない出張命令書の存在により、原告Aが空出張を疑うことも全く不合理なことであったとまではいえない。
以上のとおり、原告Aの認識していた事情を基礎とすれば、被告が本件補助金を不正に受給しているのではないかと疑問を抱くことがおよそ不合理であったとまでいえるものではなく、原告Aの告発が全く根拠を欠く不当なものであったとは認められない。
また、原告Aが、本件補助金の不正受給の事実はないと認識していたにもかかららず、捜査機関に対して虚偽の告発をしたとも認められない。
そして、「原告Aによる告発がおよそ合理性を欠いていたということまではできず、その内容においても公益通報としての側面を有していたことを併せ考慮すれば、原告Aによる告発が、解雇の有効性を基礎付ける客観的合理的な理由たり得ないというべきである。」
したがって、「本件解雇1は、客観的な合理的理由を欠き、権利を濫用したものであるから、無効である。」として、内部告発を理由とした解雇を無効とした。
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