中国産クエを長崎産と偽装し販売したとして、不正競争防止法違反(品質等偽装表示・2条1項20号)の罪に問われた水産卸会社の社長らへの判決公判が大阪地方裁判所であった。(大阪地裁令和6.4.19)

 

判決は、仕入れを担当していた常務を有罪(懲役2年、執行猶予3年、罰金110万円)とした。

この判決で注目すべきことは、本件の故意性についてである。

 

まず、被告人a3について、中国産くえの仕入れに関する認識についてみると、同被告人は、平成28年1月から平成29年1月までの間、国産、中国産を含め全ての仕入れ業務を担当していたことが認められる。

 

そして、この間に被告会社が仕入れたくえの総量は7849kgであり、うち中国から仕入れたものは7442kgとその95%程度に及んでいるところ、

 

同被告人は、その業務の遂行上、この割合について、厳密かはともかくして、概ね認識していたと認められ、被告会社が仕入れたくえは量的にほとんどが中国産であるとの認識があったものと認められる。

 

そして、くえの販売等に関する認識についてみると、被告人a6は、その検察調書において、被告人a3は、仕入れたくえを水槽と海のいけすのどちらに入れるかや、販売価格等を決め、

 

配送価格表や店頭価格表の作成を主導し、取扱商品を記載した「おしながき」と題する書面を作成し、被告人a6は被告人a3から店頭価格表を受け取っていた旨供述する。

 

この供述は、被告人a6が被告人a3について虚偽の供述をする理由は見当たらないこと、また、被告人a3が被告会社におけるくえの仕入れを全て担当し、被告会社において社長である被告人a2に次ぐ常務の立場にあった等に照らして十分信用することができる。

 

そうすると、被告人a3は、被告会社において、くえの販売等についてもこれを統括する立場にあったと認められる。

 

他方で、平成28年11月から平成29年1月までの間の配送価格表及び店頭価格表には、「天然クエ長崎」ないし「養殖クエ長崎」と記載があるのみで、中国産くえについては一切記載がない。

 

そうすると、被告人a3は、被告会社におけるくえの仕入れを全て担当していたことにより、被告会社が仕入れたくえはほとんどが中国産であることを認識しながら、

 

その販売等についてもこれを統括する立場で関与し、国産くえの表示しかない配送価格表や店頭価格表の作成を主導するなどしていたのであるから、

 

被告会社が中国産くえを中国産として販売等したことがあるという事実を考慮しても、被告人a3が、同a6や同a4らの販売担当者において、大量に仕入れた中国産くえの全てをそのまま中国産として販売等すると考えていたということはあり得ないというべきである。

 

「被告人a3は、本件各取引について、販売担当者である被告人a6または同a4が、中国産くえを国産くえであるとして販売すること、すなわち産地偽装することについて、少なくとも未必的には認識していたと認められる。」として、故意を認定した。

 

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