株券発行前にした株券発行会社の株式譲渡の効力について争われた訴訟の上告審判決が最高裁判所であった。(最判令和6.4.19)
判決内容は以下のとおりである。
まず、会社法は、株主はその有する株式を譲渡することができると規定するとともに(127条)、株式は意思表示のみによって譲渡することができることを原則とするところ、
同法128条は、株券発行会社の株式の譲渡について特則を設け、同条2項は、株券の発行前にした譲渡につき、株式発行会社に対する関係に限ってその効力を否定している。
そして、同条1項は、株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じないと規定しているところ、
株券の発行前にした譲渡について、仮に同項が適用され、株券の交付がないことをもって、株券発行会社に対する関係のみならず、
譲渡当事者間でもその効力を生じないと解すると、同項とは別に株券発行会社に対する関係に限って同条2項の規定を設けた意味が失われることになる。
また、株券の発行前にした譲渡につき、上記原則を修正して譲渡当事者間での効力まで否定すべき合理的必要性があるということもできない。
以上によれば、同条1項は、株券の発行後にした譲渡に適用される規定であると解すのが相当である。
したがって、「株券の発行前にした株券発行会社の譲渡は、譲渡当事者間においては、当該株式に係る株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはないと解するのが相当である。」として、当事者間では有効とした。
また、株券発行会社の株式の譲受人は、株券の発行前に株式を譲り請けたとしても、当該株式に係る株券の交付を受けない限り、株券発行会社に対して株主として権利を行使することができないから(会社法128条2項)、
当該株式を譲り受けた目的を実現するため、譲渡人に対して当該株式に係る株券の交付を請求することができると解される。
そうすると、「株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全する必要があるときは、民法423条1項本文により、譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができると解するのが相当である。」としている。
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