新型コロナウイルスのワクチン接種の関連業務で、東大阪市から8億9000万円余りの業務委託費をだまし取ったとして、詐欺罪(刑法246条)に問われた近畿日本ツーリストの大阪の元支店長ら3人への判決公判が大阪地方裁判所であった。(大阪地裁令和6.3.15)

 

判決は、懲役3年、執行猶予5年の有罪とした。

判決内容は以下のとおりである。

 

まず、本件は、旅行会社に勤務する被告人3名が、共謀の上、同社が東大阪市から受託した新型コロナウイルスワクチン接種事業に関する業務に関して、

 

2か年度にわたり、再委託先の稼動実績を過大に計上するなどして水増し請求をし、同市から約8億9000万円(うち水増し分約2億2000万円)を詐取した事案であり、その結果は重大である。

 

その犯行態様も、同市から稼動実態についての証憑類の提出を求められていないことを見越して内容虚偽の報告書を繰り返し提出するなどしたもので、巧妙で悪質である。

 

被告人Fは、新型コロナウイルスの感染拡大の中で旅行業を営む自社が経営上の危機に陥る中、会社の売上げを確保するため、本件詐欺の実行を担ったものであり、

 

被告人A及び被告人Eは、被告人Fの上司という立場にありながら、被告人Fから水増し請求の概要を知らされながらも、これを容認したことにより、本件詐欺が実行継続されたものであって、

 

「3名の会社内での立場には違いがあるが、担った役割に照らすと、3名の刑責に大きな違いがあるといえるほどの差異は認められず、被告人らには同程度の非難が妥当するというべきである。」

 

また、本件犯行の背景として、不正請求を是認する会社の企業風土があったことが犯行に少なからず影響していると認められ、

 

被告人らが犯行によって直接的な利益を得ておらず、会社のための犯行という側面が強いことも考慮すると、被告人らの個人責任を厳しく追及することは躊躇を覚える。

 

そこで、以上の諸事情を総合考慮し、被告人3名をそれぞれ主文の刑に処した上、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。

 

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