直接雇用を前提とする「紹介予定派遣」として任天堂で働いていていた保健師(派遣労働者)が上司である産業医からパワーハラスメントを受けたとして、同社に慰謝料を求めた訴訟の判決が京都地方裁判所であった。(京都地裁令和6.2.27)

 

判決は、パワハラによる不法行為責任(使用者責任)を認めた。

判決内容は以下のとおりである。

 

まず、「職場における優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境を害し、肉体的・精神的苦痛を与えた場合には、当該言動は、当該労働者に対する不法行為に該当するパワーハラスメントであると認められる。」とした。

 

原告らの主張する仕事外しのうち、パワーハラスメントに該当し得るものは、定例ミーティングの中止及び禁止である。

 

被告Cは、保健相談室において原告らに対して業務指示をする立場にあり、優越的地位を有するところ、

 

一方的な定例ミーティングの中止及び禁止は、原告らとの会話を避けようとする不当な目的の下に、ミーティングの目的、

 

すなわち、保健師と産業医との間で業務に関する認識の齟齬をなくし、共通認識を形成するという業務上の必要性を無視して行われたものであり、パワーハラスメントに該当する。

 

さらに、原告らの主張する無視等について、原告らは、被告Cの各行為では違法であるとはいえなくても、継続した一連の行為として扱うことで違法となる一体的行為として扱うべきであると主張する。

 

この点、上記(5)のうち、単に不適切な行為にあたるア、イ、エ及びカ並びに業務上の必要性が否定できないオを除き、その余のウ及びキにつき、

 

被告Cの言動は、原告らとの接触を避けようとする不当な目的の下に、業務上の必要性の乏しい差別的な対応をとるものであって、一連のものとして扱うのが相当であり、

 

これらの行為によって、原告らの就業環境が害され、精神的苦痛を与えたものと認められるから、不法行為に該当するといえる。

 

したがって、「被告Cの行為のうち、定例ミーティングの中止及び禁止、業務上必要のある声掛けへの無視並びに被告Cの退院後に、原告らに対してのみ他の従業員と比べて差別的な対応をとった点については、不法行為であると認められる。」として、パワハラを認定した。

 

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