DVDに収録したてんかん発作の症例について解説したアニメーション動画をユーチューブに投稿することが著作権侵害(著作者人格権侵害も含む)にあたるとして、制作者が出版社に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が知的財産高等裁判所であった。(知財高裁令和6.3.28)

 

判決は、一審判決と同様に著作者人格権(氏名表示権)侵害を認めた。

この判決で注目すべきことは、本件動画の映画製作者(著作権者)についてである。

 

まず、著作権法29条1項にいう「映画製作者」は、映画の著作物の製作に発意と責任を有する者である(同法2条1項10号)。

 

著作権法2条1項10号の文言及び29条1項の上記趣旨からみて、「映画製作者」とは、「映画の著作物を製作する意思を有し、同著作物の製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって、そのことの反映として同著作物の製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者のことであると解するのが相当である。」とした。

 

そのうえで、本件DVDの付属物とした本件書籍を出版したのは被控訴人であり、また、控訴人との間で本件映像の制作に関する委託契約も締結したのは被控訴人であり、

 

このことからすれば、控訴人に対して、上記委託契約の対価を支払う義務を負っていた者は被控訴人であったと認められることなどから、

 

本件映像の映画製作者、すなわち、本件映像を製作する意思を有し、その製作に関する法律上の権利義務が帰属する主体であって、

 

その反映として、「映画の著作物」である本件映像の製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者は、被控訴人であると認めるのが相当である。

 

そして、認定事実によれば、本件映像の著作者である控訴人は、被控訴人に対し、本件映像の製作に参加することを約束していたと認められる。

 

したがって、「著作権法29条1項により、本件映像の著作権は、その映画製作者である被控訴人に帰属すると認められる。」とした。

 

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