悪徳商法の被害に遭ったとする消費者に代わって、国の認定を受けた消費者団体が被害回復を求めた訴訟の上告審判決が最高裁判所であった。(最判令和6.3.12)

 

この判決で注目すべきことは、消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(消費者裁判手続特例法)による共通義務確認の訴えに関してである。

 

まず、法は、消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害を集団的に回復するため、共通義務確認訴訟において、

 

事業者がこれらの消費者に対して共通の原因に基づき金銭の支払義務を負うべきことが確認された場合に、当該訴訟の結果を前提として、

 

簡易確定手続において、対象債権の存否及び内容に関し、個々の消費者の個別の事情について審理判断をすることを予定している(2条4号、7号)。

 

そうすると、「法3条4項により簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であるとして共通義務確認の訴えを却下することができるのは、

 

個々の消費者の対象債権の存否及び内容に関して審理判断をすることが予想される争点の多寡及び内容、当該争点に関する個々の消費者の個別の事情の共通性及び重要性、想定される審理内容等に照らして、消費者ごとに相当程度の審理を要する場合であると解される。」とした。

 

これを本件についてみると、上告人が被上告人らの不法行為の内容は、被上告人らが本件対象消費者に対して仮想通貨に関し誰でも確実に稼ぐことができる簡単な方法があるなどとして、

 

本件各商品につき虚偽または実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明をしてこれらを販売するなどとしたというものであるところ、

 

前記事実関係によれば、被上告人らの説明は本件ウェブサイトに掲載された文言や本件動画によって行われたものであるから、

 

本件対象消費者が上記説明を受けて本件各商品を購入したという主要な経緯は共通しているということができる上、その説明から生じ得る誤信の内容も共通しているということができる。

 

そして、本件各商品は、投資対象である仮想通貨の内容等を解説し、または取引のためのシステム等を提供するものにすぎず、仮想通貨への投資そのものではないことからすれば、

 

過失相殺の審理において、本件対象消費者ごとに仮想通貨への投資を含む投資の知識や経験の有無及び程度を考慮する必要性は高いとはいえない。

 

さらに、上記のとおり、本件対象消費者が上記説明を受けて本件各商品を購入したという主要な経緯は共通しているところ、上記説明から生じた誤信に基づき本件対象消費者が本件各商品を購入したことを考えることには合理性があることに鑑みれば、

 

本件対象消費者ごとに因果関係び存否に関する事情が様々であるとはいえないから、因果関係に関して本件対象消費者ごとに相当程度の心理を要するとはいえない。

 

「以上によれば、過失相殺及び因果関係に関する審理判断を理由として、法3条4項にいう『簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき』に該当するとした原審の判断には、同項の解釈適用を誤った違法である。」としている。

 

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