新型コロナウイルス関連事業の業務委託費を巡る近畿日本ツーリストの過大請求事件で、静岡県掛川市などからコールセンター運営費用をだまし取ったとして詐欺罪(刑法246条)に問われた静岡支店の元社員への判決公判が大阪地方裁判所であった。(大阪地裁令和6.1.16)

 

判決は、懲役2年、執行猶予4年の有罪とした。

判決内容は以下のようになっている。

 

まず、A株式会社B支店の次長・リーダーの地位にあり、営業担当をしていた被告人が、静岡県掛川市及び焼津市からワクチン接種事業に係るコールセンター等運営業務を受注した際に、

 

コールセンターに派遣された作業従事者の人数を水増しするなどの方法により両市に対して業務委託費を過大に請求し、

 

掛川市から合計1億704万4969円(うち水増し・架空分2262万2160円)を、焼津市から合計1億1718万635円(うち水増し・架空分3018万9500円)を、それぞれ詐取したという詐欺事案である。

 

詐取金額は非常に高額であり、水増し・架空請求した分に限ってみても合計5281万1660円を上っており、結果は重大というほかない。

 

もっとも、詐取に至る経緯・動機や詐取金の帰属先についてみると、被告人は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い旅行の需要が減り、会社の業績が悪化している中、

 

自らの営業により受注できたワクチン接種事業に係るコールセンター業務につき市や再委託先業者と折衝等を重ねる過程で、

 

市側が当初要求していたとおりの人数の作業従事者を派遣したり多言語対応をしたりせずともコールセンターの応答に支障は生じないなどと考える一方、

 

これを機に派遣人数を水増しするなどの方法で過大請求を行えば、会社の収益が上がり、危機的状況にある会社に貢献し得るなどと考え、各犯行に及んだと認められる。

 

公的資金を詐取するという事の重大さに想いを致すことなく犯行に及んだ被告人の判断は、安易というほかないが、

 

一時的には会社の売上増を目的とした犯行であって、だまし取った現金を自らに帰属した詐欺事案とは異なるし、高い計画性を認め得る事案ともいい難い。

 

「A社内で過大請求等を是正し得るようなチェック機能が働いていなかったことも、巨額の被害を発生させた要員の1つと言い得る。」などとしている。

 

当ブログは「にほんブログ村」に参加しております。
よかったらこちらをクリック願います。
にほんブログ村 法務・知財