ノンフィクション・エッセイの表紙デザインを模倣した書籍を発行することが不正競争防止法違反にあたるとして、出版社が損害賠償を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和6.1.30)

 

判決は、不正競争防止法違反(2条1項1号)を否定した。

この判決で注目すべきことは、本件書籍の表紙デザインが不競法2条1項1号の周知な商品等表示にあたるかである。

 

まず、「商品等表示」とは、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品または営業を表示するもの」をいう(不正競争防止法2条1項1号)。

 

商品の形態は、商標等と異なり、本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないが、

 

商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合があるところ、このように商品の形態自体が「商品等表示」に該当するためには、

 

「商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、または極めて強力な宣伝広告や販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること(周知性)を要すると解する。」とした。

 

そのうえで、原告書籍については、仮に、原告主張のとおりシリーズ累計発行部数が46万部であったとしても、その需要者が広くノンフィクション・エッセイに関心を有する者であることも踏まえると、原告書籍それ自体が周知といえるほどの販売実績があったとはいい難い。

 

その点を措いても、その販売期間はシリーズを通算しても4年半程度に過ぎず、原告表示につき原告によって長期間独占的に使用されたものとは認められない。

 

また、その宣伝広告の実情等をみても、極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により、需要者であるノンフィクション・エッセイに関心を有する者において、

 

原告表示をもって、これを有する原告書籍の出所が特定の事業者である原告(ないし「原告書籍の発行者」)であることを表示するものとして周知になっていたとは認められない。

 

以上により、「原告表示は、一般消費者にとって、原告書籍の出所として原告を表示するものとして周知になっているものとはいえないから、『商品等表示』に該当するとはいえず、また、『需要者の間に広く認識されている』ということもできない。」として、不正競争防止法違反(2条1項1号)を否定した。

 

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