計測作業に用いられるブログラムを複製し使用することが著作権侵害(著作者人格権侵害も含む)にあたるとして、フリーのプログラマーが建設コンサルタント会社に損害賠償を求めた訴訟の判決が大阪地方裁判所であった。(大阪地裁令和6.1.29)

 

判決は、著作者人格権(氏名表示権)侵害を認めた。

この判決で注目すべきことは、本件プログラムのソースコードがプログラム著作物にあたるかである。

 

まず、著作権法が保護の対象とする「著作物」であるというためには、「思想または感情を創作的に表現したもの」であることが必要であるところ(同法2条1項1号)、

 

著作権法上の「プログラム」は、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」というから(同法2条1項10号の2)、

 

「あるプログラム著作物(同法10条1項9号)として保護されるためには、プログラムの具体的記述によって、作成者の思想または感情が創作的に表現され、指令の表現自体、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり、それがありふれた表現ではなく、作成者の個性が表れていることが必要であると解される。」とした。

 

そのうえで、本件プログラム1は、マンロック(高圧室作業場所への作業員の出入り用気密扉)内の気圧、二酸化炭素濃度等を記録するペーパーレスレコーダー(最大10機)を集中管理(レコーダーで記録された情報を遠隔地パソコンでリアルタイムに表示し、データを蓄積するとともに閾値を超えた場合は警告を発することが可能)するプログラムであり、

 

統合管理画面(インフォーム画面)、個々のレコーダーの監視画面(レコーダーフォーム画面、表示形式はレコーダーと同様。)、レコーダーの通信ルーチン、データベース(レコーダーの情報を集積する部分)などを構成要素とするものである。

 

この点、画面構成や、レコーダーのデータをどのように扱うかについては、プログラムの目的、環境規則の態様、ハードウェアやオペレーティングシステムなどに由来する規約等により、表現の選択の余地の乏しいものもあると考えられるが、

 

データの処理の具体的態様(クラス、サブルーチンの利用等の構造化処理を含む)、レコーダーとの通信プロトコルの選択及びそれに応じた実装、データベース化の具体的処理手順などについて、

 

各処理の効率化なども意識してソースコードを記述する過程においては、相応の選択の幅があるものと認められる。

 

原告は、このような選択の幅の中から、データ処理の態様を設計した上、A4用紙で約120頁分(1頁あたり60行程度、以下同様)のソースコードを作成したことからすると、

 

「ソースコードの具体的記述を全体としてみると、本件プログラム1は、原告の個性が反映されたものであって、創作性があり、著作物であるということができる。」として、プログラム著作物にあたるとした。

 

当ブログは「にほんブログ村」に参加しております。
よかったらこちらをクリック願います。
にほんブログ村 法務・知財