将棋のタイトル戦の棋譜を盤面図に再現した動画が著作権侵害である旨の通知をし削除することが不正競争防止法違反にあたるとして、ユーチューバーが棋戦を中継する運営事業者「囲碁・将棋チャンネル」に損害賠償などを求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和6.1.16)

 

判決は、不正競争防止法違反(2条1項21号・信用毀損行為)を認めた。

この判決で注目すべきことは、棋譜情報の取扱いについてである。

 

まず、被告は、原告による本件動画の配信は、被告が配信する棋譜情報をフリーライドで利用するという著しく不公正な手段を用いて被告ら棋戦主催者の営業活動上の利益を侵害するものとして不法行為を構成することを指摘して、

 

本件動画の配信に係る営業上の利益は法律上保護される利益にあたらない旨を主張し、これを裏付ける証拠として「王将戦における棋譜利用ガイドライン」を提出する。

 

しかし、棋譜は、公式戦対局の指し手進行を再現した「盤面図」及び符号・記号による「指し手手順の文字情報」を含むものと認められるところ、

 

「本件動画で利用された棋譜等の情報は、被告が実況中継した対局における対局者の指し手及び挙動(考慮中かどうか)であって、有償で配信されたものとはいえ、公表された事実であり、原則として自由利用の範疇に属する情報であると解される。」とした。

 

同ガイドラインは、棋譜の利用権等を王将戦主催者が独占的に有する旨規定するが、王将戦主催者を含めた被告の実況中継の閲覧者の関与なく一方的に定めたものであり、原告に対して法的拘束力を生じさせるものであるとはいえない。

 

また、「本件動画は、被告の著作権を侵害するものではなく、その他、原告が、被告の配信する棋譜情報を利用することが不法行為を構成することを認めるに足りる事情はない。」

 

したがって、被告の前記主張は、その前提を欠き、採用できない。

 

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