インターネット回線を使うIP電話の回線を特殊詐欺グループに提供したとして、詐欺(刑法246条)ほう助罪に問われた合同会社役員への控訴審判決が広島高等裁判所であった。(広島高裁令和5.10.31)

 

判決は、一審判決と同様、詐欺ほう助罪で有罪とした。

判決内容は以下のようになっている。

 

まず、所論は、原判決には、一般可能性を超える具体的な特殊詐欺等への犯罪使用状況についての指摘はなく、被告人らが例外的とはいえない範囲の者がそれぞれ特殊詐欺に利用する蓋然性が高いことを認識・容認していたとまで認めることは困難であり、このことからも被告人には詐欺幇助の故意に欠けるというべきであり、

 

さらには、所論は、原判決はAが第三者に提供したIP電話回線の犯罪利用率が高いから許されないとの判断をしており、有罪無罪の境界を結果的に犯行に利用された割合で決定することは罪刑法定主義に違反するなどともいうのである。

 

しかしながら、原判決は、前述したとおり、被告人らが提供したIP電話回線利用サービスが特殊詐欺を含む犯罪行為に多数利用されている状況に関して、

 

現に捜査関係事項照会や捜索を受け、そのような状況にあることを被告人らも認識していたにもかかわらず、あえて契約書を作成せず本人確認も行わずにIP電話回線利用サービスの提供行為を続けていたことから、

 

「Aにおいては、特殊詐欺を含む犯罪行為に利用されている実態を容認し、意図的に実際の契約者を特定することが困難な形でIP電話回線利用サービスの提供を行っていたといえ、被告人に詐欺幇助の未必的な故意が認められるとの判断を示している」のであって、

 

その判断の前提あるいは具体的な裏付けとなる事実として、Aが提供したIP電話回線のつち一定の範囲のものについて、特殊詐欺に使用されたことが確認されているものの割合や、不正利用が疑われるものの割合を指摘しているのである。

 

「このような原判決の判断内容に照らせば、一般的可能性を超える具体的な特殊詐欺等への犯罪使用状況、例外的とはいえない範囲の者がそれを特殊詐欺に利用する蓋然性等といった抽象的な観点から原判決の判断を論難する所論の指摘は当を得たものとはいえず、もとより、原判決が有罪無罪の境界を結果的に犯行に利用された割合で決定するといった判断の仕方をしているものでないことは明らかというべきである。」としている。

 

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