ファイル共有ソフト「ビットトレント」を使用してインターネット上に動画を公開することが著作権侵害にあたるとして、プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報の開示を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和5.12.14)

 

判決は、著作権侵害を認めた。

この判決で注目すべきことは、ビットトレントの使用による公衆送信権侵害の過失についてである。

 

まず、被告は、本件クライアントソフトの下欄に表示されたIPアドレスと上欄のファイル名のシーダー等の対応関係を特定することができない旨や、

 

本件クライアントソフト上に表示されたファイルの内容が、同じファイル名の正規品の内容と異なる可能性がある旨、

 

また、本件各発信者がビットトレントの仕組みを理解しておらず、ファイルをアップロードしていることの認識がない場合には、公衆送信権侵害の故意及び過失がない旨などを主張する。

 

しかし、まず、本件クライアントソフトにおいては、その画面の上欄にダウンロードされている複数の品番のファイルが表示されているところ、

 

このうち特定のファイルを選択すると、下欄に当該選択されたファイルの取得先IPアドレスが自動的に表示される仕組みとなっていることが認められる。

 

したがって、本件クライアントソフトにおいて、下欄に表示されたIPアドレスが上欄のいずれのファイルのダウンロードに関するものであるかは、本件クライアントソフトの仕組みに照らせば明確に特定されているといえる。

 

次に、ビットトレント上にアップロードされたファイル名をアップロードする者が変更すること自体は可能とみられる。

 

しかし、本件調査においては、実際に本件各動画の作品番号等に基づき検索したファイルをダウンロードした上で正規品との内容の同一性を確認するプロセスを経ていることも考慮すれば、

 

本件各発信者がアップロードしたファイルと別紙侵害著作物目録記録の各動画との同一性について疑義を抱くべき具体的な事情とはいえない。

 

故意または過失については、ビットトレントを利用してファイルをダウンロードすると同時に当該ファイルをアップロードすることになるというビットトレントの仕組みはビットトレントの最も基本的な特徴の1つであり、

 

本件クライアントソフトのエンドユーザー使用許諾契約書や公刊された書籍にもその旨が明記されていることも鑑みると、

 

ビットトレントの利用にあたり、本件各発信者がこのような基本的な特徴を理解しないまま本件ファイルをダウンロードしていたとは考え難い。

 

そうすると、「本件各発信者には、本件各動画に係る公衆送信権侵害につき、少なくとも過失が存することは明らかというべきである。」として、過失を認定している。

 

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