大手回転ずしチェーン「くら寿司」の店舗で、しょう油差しに口を付けて飲んだかのような様子を動画撮影しSNS(交流サイト)に投稿したなどとして、威力業務妨害罪(刑法234条)などに問われた者への判決公判が名古屋地方裁判所であった。(名古屋地裁令和5.10.13)

 

判決は、懲役3年、執行猶予5年の有罪とした。

判決内容は以下のようになっている。

 

まず、被告人が、未成年の被害者を営利目的で誘拐した(判示第1)ほか、共犯者と共謀の上、回転寿司店において行った迷惑行為の動画をSNSに投稿してその運営会社の業務を妨害した(判示第2)という事案である。

 

まず、重い営利誘拐(判示第1)についてみると、被告人は、自身に好意を寄せる被害者から家出をしたいなどと申し向けられたのを受け、

 

判示のとおり援助交際をして稼げば2人で生活できるなどと言って同女を誘い出すと、その後3か月弱にわたり、同女に売春をさせて当座の生活費等を稼がせながら、各地を連れ回していたものである。

 

この間、被害者の母に被害者本人と連絡を取ることもままならないなど、その監護権が大きく侵害されただけでなく、売春を重ねた被害者自身についても、その心身の健全な成長への悪影響が懸念される。

 

被害者の母の処罰感情が厳しいのは当然である。

 

また、被告人は、このように被害者を連れ回す中、SNS上で炎上していた別の回転寿司店での迷惑行為に関する動画に触発されて、かねて不良交遊を通じて知り合った共犯者とともに、

 

回転寿司店で醤油差しを直接口につけるような素振りをした迷惑行為の動画をSNSに投稿し、同店の運営会社の業務を妨害した(判示第2)。

 

顧客に安心して食事をしてもらおいという同店の努力を無にしかねない。

あまりに無分別な犯行である。

 

このような動画が配信されたことにより、同社は、醤油の廃棄、入れ替えや店舗の消毒作業等のために少なくとも57万円余りの支出を余儀なくされているだけでなく、多数の苦情等への対応を求めるなど、その業務に多大な負担が生じるに至った。

 

しかるに、被告人からは現時点までに被害弁済はなされておらず、その具体的な見込みも立っていない。

 

「以上によれば、被告人の刑事責任は重い。」としている。

 

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