ツイッター上に投稿した民事保全法による発信者情報開示仮処分命令申立書を氏名不詳のアカウントに転載することが著作権侵害にあたるとして、プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報の開示を求めた訴訟の判決が東京地方裁判所であった。(東京地裁令和5.7.6)

 

判決は、著作権侵害を否定した。

この判決で注目すべきことは、本件仮処分命令申立書を添付してツイートすることが引用(著作権法32条1項)にあたるかである。

 

まず、他人の著作物は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の目的上正当な範囲内で行われる場合には、これを引用することができる(著作権法32条1項)。

 

そして、「その要件該当性を判断するには、引用される著作物の内容及び性質、引用の目的、その方法や態様、著作権者に及ぼす影響等の程度の諸般の事情を総合考慮して、社会通念に照らし判断するのが相当である。」とした。

 

これを本件についてみると、本件写真は発信者情報開示の仮処分命令を求める民事保全手続に係る申立書等を撮影したものであり、

 

本件投稿が、本件写真と共に、「申立を行ったというツイートで掲載している画像、申し立てをしたというのなら、受付印を受けた控えの画像が出てくるのかと思ったのだが。」との文章を投稿するものであることからすると、

 

本件投稿は、原告が、上記民事保全手続の申立てをした旨投稿しているのに、同投稿に付された本件写真に「受付印」がないことを批評する目的で本件写真を利用したことが認められる。

 

そうすると、本件投稿において本件写真を示すことは、批評の対象となった投稿の内容を理解するに資するものといえるから、本件写真の利用は、批評の目的上正当な範囲内で行われたものといえる。

 

また、本件写真には、「債権者」として原告の氏名が記載されており、本件投稿には、「申立てを行ったというツイートで掲載している画像。」と記載されていることが認められることからすれば、

 

一般の閲覧者の普通の注意と読み方を踏まえると、本件写真の投稿者は、原告であると理解されると解するのが相当である。

 

そうすると、本件写真の出所は明らかであるといえ、その他に、本件写真及び本件投稿の内容、上記批評の目的、本件写真の撮影態様等を併せ考慮すると、本件投稿に本件写真を添付したことは、公正な慣行に合致しているものと認めるのが相当である。

 

したがって、「仮に本件写真に著作物性が認められるとしても、本件投稿において本件写真を利用する行為は、著作権法32条1項に規定に基づき、適法であるものと認められる。」としている。

 

当ブログは「にほんブログ村」に参加しております。
よかったらこちらをクリック願います。
にほんブログ村 法務・知財