桜を題材としたイラストのデザインを変更しグリーティングカードに複製し販売することが著作権侵害(著作者人格権侵害も含む)にあたるとして、イラストレーターがメーカーに損害賠償(慰謝料も含む)を求めた訴訟の判決が大阪地方裁判所であった。(大阪地裁令和4.12.12)

 

判決は、著作権(複製権及び翻案権)侵害と、著作者人格権(同一性保持権)侵害のいずれも否定した。

この判決で注目すべきことは、上記権利侵害の判断基準に関してである。

 

まず、著作物の複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい(著作権法2条1項15号)、

 

既存の著作物に依拠し、これと同一のものを作成し、または、具体的な表現に修正、増減、変更等を加えても、新たに思想または感情を創作的に表現することなく、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、

 

これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものを作成する行為をいうと解される。

 

また、著作物の翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想または感情を創作的に表現することにより、

 

これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。

 

そして、「思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分または表現上の創作性のない部分において既存の著作物と同一性を有するに過ぎない著作物を創作する行為は、既存の著作物の翻案にあたらない。」とした。

 

さらに、「既存の著作物の著作者の意に反して、表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現に変更、切除その他の改変を加えて、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものを創作することは、著作権法20条2項に該当する場合を除き、同一性保持権侵害にあたる。」とした。

 

そのうえで、被告イラスト2は、アイデアなど表現それ自体でない部分または表現上創作性のない部分において原告イラスト1と同質性を有するにとどまり、

 

これに接する者が、原告イラスト1の表現上の本質的な特徴を感得することができないから、依拠性を判断するまでもなく、原告イラストの複製及び翻案にあたらない。

 

よって、「被告イラスト2を用いた被告製品2を被告が販売した行為は、原告の原告各イラストに係る複製権及び翻案権を侵害するものとはいえず、同様に、同一性保持権を侵害するということはできない。」とした。

 

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