代表取締役を務めていた会社から現金を着服し業務上横領罪(刑法253条)に問われた者への上告審判決が最高裁判所であった。(最判令和4.6.9)

 

判決は、懲役2年とした控訴審判決を破棄し、時効の完成を理由に免訴とした一審判決が確定した。

この判決で注目すべきことは、単純横領罪(刑法252条1項)の公訴時効についてである。

 

まず、公訴時効の趣旨は、処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることにあり、刑訴法250条が刑の軽重に応じて公訴時効の期間を定めているのもそれを示すものと解される。

 

そして、処罰の必要性(行為の刑罰的評価)は、犯人に対して科される刑に反映されるものということができる。

 

本件において、業務上占有者としての身分のない非占有者である被告人には刑法65条2項により同法252条1項の横領罪の刑を科すこととなるとした第1審判決及び原判決の判断は正当であるところ、

 

公訴時効制度の趣旨等に照らすと、「被告人に対する公訴時効の期間は、同罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑訴法250条2項5号)であると解するのが相当である。」とした。

 

そこで、単純横領罪(刑法252条1項)の公訴時効は5年であるのに対し、業務上横領罪(刑法253条)の公訴時効は7年である。

 

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