京都土産として有名な「八ツ橋」の老舗「聖護院八ツ橋総本店」が「創業元禄2年」をうたうのは事実と異なり不正競争防止法違反にあたるとして、別の老舗「井筒八ツ橋本舗」が表示の差止めなどを求めた訴訟の判決が京都地方裁判所であった。(京都地裁令和2.6.10)

 

判決は、不正競争防止法違反(品質等誤認表示)を否定した。

この判決で注目すべきことは、パッケージ上などで表示された「創業元禄2年」が商品の品質及び内容に関わるものかである。

 

まず、確かに、被告自身、味は伝統という表示も用いているほか、被告各表示、とりわけ被告表示(4)は、八ツ橋が元禄2年から作られていると明言しているから、300年以上にわたる長い伝統を有することが商品の優位性を推認させる事情であるようにもみえる。

 

しかし、そもそも、江戸時代におけることがらが、特段の資料なしに、正確にはわからないことは、全国の一般消費者である需要者にとっても、経験則上、推認できる。

 

そして、これまで認めた事実からは、需要者は、複数の事業者の店舗が並ぶのは見て、あるいはインターネットのホームページを見て、八ツ橋の発祥地や来歴につき、複数の業者により異なった説明がされていること、どれが正しいかの決め手もないことを簡単に知ることができると推認できる。

 

上記のような需要者の認識を踏まえれば、被告各表示に接した需要者が、歴史の古さが被告菓子の品質及び内容の優位性を推認させると受け取ることがあるとしても、

 

「被告各表示は、いずれも商品の品質及び内容の優位性と結びつき、需要者の商品選択を左右するとはいえないから、品質等誤認表示とはいえない。」とした。

 

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