今回の東京都知事選挙ほど書くネタに困らない選挙は、珍しい。
選挙が終わってしまえばすぐ忘れてしまうようなことなのだが、選挙から出来るだけ沢山のことを学ぼうと考えている人間にとってはやはりしっかりと書き残しておいた方が親切だろうと思って、書いておく。
天敵と書いたが、別に点滴から連想したわけではない。
私が普段から心していることを、たまたま今回の東京都知事選挙を通じて改めて感得したからである。
事を為そうと思う人は、決して天敵を作るべからず。
これが、私の私自身に対する戒めである。
天敵を作ってしまうと、大事な時に足を引っ張られる。
足を引っ張られるだけではなく、時には後ろ向きに引き倒され、あるいは大事な舞台から引き摺り下ろされてしまうことがある。
天敵とは、終生絶対に妥協できない敵のことである。
何もない時は素知らぬ顔をして付き合っているが、いざという時に渾身の刃を奮って襲いかかる敵のことである。
鳥越氏にとっては、どうやら東国原氏が天敵のようである。
あんたは終わった人だ、というかつての鳥越氏の言葉に腹が煮えくり返ったのだろう、ここぞとばかりに東国原氏は鳥越氏に対しての口撃を繰り返している。
ああ、凄まじいものだな、と思うが、とても止みそうにない。
心無い一言で人がどんなに傷付くか、どんなに深い恨みを抱くのか、という好個の例になりそうだ。
もっとも、テレビに顔を出す人たちの言動は半分は演技だろうから、本当はそこまでの恨みはないのかも知れないが、内情を知らない普通の人は東国原氏の言葉を真に受けるはずである。
クワバラ、クワバラ、というところか。
もう一人とても始末に負えそうもない難しい天敵を抱えていそうな人がいる。
自民党の東京都連の幹事長というポストに座っている人である。
自民党都連のドン、都議会のドンだと言われているようだが、私はその人がどんな人かはとんと知らない。
この人の天敵は、元東京都知事の猪瀬氏だ。
大分猪瀬氏に意地悪をしたような感じである。
副知事だった猪瀬氏が都知事選挙への立候補を決めたときに、猪瀬氏から頼まれた選挙のポスターを全部猪瀬氏に突き返したそうだ。
ポスターの数は2万枚ほどあったそうだ。
選挙に出る候補者が選挙の直前に支援団体からポスターを突き返されたら、それは困る。
いつの時点のことかは知らないが、猪瀬氏が如何に困惑したか、選挙を経験した人であればすぐ分かるはずである。
自分は自民党東京都連から推薦されて立候補した候補者などではない、と猪瀬氏がむきになって反論するのは当然だ。
猪瀬氏のこの人に対する口撃もとても止みそうにない。
都議会のドンを撃破してくれそうな人に都知事になってもらいたい、という切実な願いがビンビンと伝わってくる。
天敵は作るべからず、と私が言いたくなるのは、こういうことがあるからである。
私もポスターの配布をお願いして、そのままどこかにお蔵入りをされてしまった、という経験をしている。
さすがに突き返されはしなかったから、何も文句は言わなかったが、無視されてしまった、いい加減にあしらわれてしまった、という屈辱感は簡単には癒えない。
出来るならば天敵は作らないことだ。
大事な時に、後ろから狙われる。