あは、確かに逆転の発想だが・・・東京駅への救急隊配置構想の問題点 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

民間で出来ることは民間で、という小泉内閣当時の聖域なき改革の時代が懐かしくなる。

東京消防庁が東京駅に試験的に救急隊を置くことにしたそうだ。
ふーん、と思った。
評価してもいいのかな、と一瞬思ったが、どこかおかしい。

東京マラソンの際に警視庁が「走る警察官」を導入したのと同様の発想で、東京都は必要であれば何にでも公務員を活用しようとしているようである。
私は、地方公務員がそんなに暇だとは思っていないし、また、それほどに余力があるとも思わないのだが、東京都は潤沢な財源に恵まれているから、何でも公共のサービスの対象としようということだろう。

一応いいことだと思う反面、さて、どこまでやるのか、どこで線引きするのか、財源はどうするのか、どうやって行政としての公平さや公正らしさを担保するのか、という疑問が湧いてくる。

公は、あくまで公がなすべき公共的なサービスに限定して行うというのが、時代の潮流のはずだ。
こうしたサービスを提供する社会資源は限られているのだから、限られた社会資源をどうやって有効に活用するかということにもう少し知恵を絞ったらどうだろうか、と思わざるを得ない。
どうも、最近は民間活力活用推進とか民営化の理念が後退もしくは置き去りになっているのではなかろうか。

毎日新聞は、こういう試みを肯定的に捉え、かつ、積極的に推進しようということだろうが、ちょっと待って、と声を上げておいた方がよさそうである。

東京消防庁が国民のニーズに応えるために色々試行錯誤されていること自体は高く評価するが、だからと言って、東京駅の構内に公務員である東京消防庁の救急隊を置くまでのことはないのではなかろうか。
東京駅に置けば、次は新宿駅、渋谷駅、品川駅などと次々に置かなければならなくなることもあり得る。
それこそ東京ドームはどうか、東京ディズニーランドはどうか、新国立競技場はどうか、などという問題にもなりそうである。

東京消防庁の救急隊に何を求めるか、どこまで求めるかだが、その求める内容次第で代替の方策が決まる。
代替策があるのであれば、何でも行政にという発想に歯止めが掛かるはずである。

救護救急の現場で何が求められているか、ということを突き詰めて考えておく必要がありそうだ。

多分、JRが東京駅構内に自ら応急処置が出来る救急救命士や警備員、さらには救護救急の業務を担える医療資格者等を配備して、東京駅構外にある消防署や医療機関と密接な連携、協力体制を構築する方がはるかに役に立つはずである。

問題提起として東京消防庁がこういう試みをすることは大歓迎ではあるが、しかし、救急隊の配備だけでは本当の問題解決にはならないだろう、と思っている専門家の方がおられる、ということも知っておかれた方がいい。

毎日新聞の記者は、もう少しこの問題を掘り下げられたらいい。
結構大事な問題である。

まあ、それでも評価する人は高く評価するだろうが。

参照:毎日新聞12月25日配信記事

「東京消防庁は25日、119番通報が多いJR東京駅(東京都千代田区)に救急隊を試験的に配置した。署や出張所など消防施設以外での隊員待機は珍しく、総務省消防庁の担当者は「全国初ではないか」としている。

東京消防庁管内では、高齢化などの影響で119番の件数が増加し、救急隊員の現場到着が遅れる傾向にある。2008年は65万3260件で到着時間平均は6分5秒だったが、14年は75万7609件で7分54秒だった。
このため東京消防庁は、周辺を含めると年間平均約1500件の119番があり、東京五輪の開催などで外国人観光客の利用増も見込まれる東京駅に試験的に救急隊を配置した。来年3月まで試行し、効果を検証する。

東京駅には日中を中心に、丸の内消防署所属の救急車1台と3人の隊員が待機。同署からは約1.2キロ離れており、約4分かかる到着時間を1~2分に短縮することを目指す。東京消防庁の森住敏光・救急管理課長は「(通報を待つのではなく)需要の多い場所に救急隊を配置するのは逆転の発想。到着時間平均7分未満を目標としたい」としている。【深津誠】」