子はかすがい、子は宝、などと言われながら、案外子どもが粗略に扱われているケースを見聞するようになった。
父親教育も母親教育もしっかりしておかないと子どもがかわいそうだな、と思うことがしばしばある。
両親のいがみ合いの中で子どもが傷ついているのを見ると、何とか子どもに手を差し伸べたくなる。
子どもの幸せを最優先で考えてください、とお願いするが、頭に血が上っている当事者は子どものことはいつの間にか頭の中から飛んで行ってしまって、自分のことしか言わなくなる。
子どもの取り合いなどしてはダメだ、と言っても聞く耳を持たない。
相手の手から引っ手繰るようにして幼い子どもを取り上げ、そのままどこかに逃げてしまう。
こういう状況になるのには色々な事情があるから、一概にいいとか悪いとは言えないのだが、取り合いの対象となった幼子にとっては実に不幸なことである。
なんとかしなければいけないのだが、という思いはずっと持ってはいたが、しかし、まさか私がこういう問題に関わることになるとは想像もしていなかった。
確か、今年の2月に開催された日本の司法を正す会の会場で初めてお会いした方である。
こういう事業を始めることを考えているのですが、相談に乗っていただきたい、ということだった。
子どもとの面会交流が出来なくなっている親のために、何とか円満な面会交流が出来るような社会システムの構築に協力して欲しい、ということだった。
国会のレベルでは親子断絶防止法の制定に向けて活動を展開している、という話だった。
単独親権から共同親権が当たり前の社会に日本を変えて欲しい、という話である。
ああ、そう言えば国際離婚に伴う国境を越えた子の連れ去り事件の発生に伴ってハーグ条約の批准の問題や民法改正の話があったなあ、という程度の認識しか持っていなかったが、話を聞いてみて問題の重大さに改めて気が付いた次第。
私に果たしてどんなことが出来るだろうか、と半信半疑でお付き合いしていたら、半年経ったら凄いことになり始めた。
らぽーる事業とは、端的に言えば、離婚によって父・母・子どもが孤立や貧困に陥らない社会の実現に向けて、離婚と親子の「駆け込み寺」をつくる事業のことである。
子ども優先のADR(裁判外紛争手続)と「共同養育計画合意書」の普及に努め、親子の再統合を目指し、親教育プログラムを実施し、ワークショップやキャンプの企画、開催とともに、専門性の高い弁護士、臨床心理士、スタッフが一丸となって、子どもの最善の利益を考え、離婚のカタチを変えることを目標としている。
事業実施主体は、特定非営利法人日本リザルツというNPO団体である。
単独親権が当然だろうと思ってきた日本の裁判所や弁護士の頭を切り替えなければならないような、日本のこれまでの家族観や日本の文化を変えるような大きな話である。
日本人の常識を変えるような話だな、と思ったが、huluで海外のドラマや映画を観ているうちに気が付いた。
離婚せざるを得ない夫婦が出てくるのは止むを得ないが、離婚したからと言って、親子の関係が当然に断絶したり、離婚した双方が当然に不幸になることもない。
まあ、あっけらかんの離婚はないだろうが、離婚にも色々ある。
悲しい離婚もあるだろうが、時には円満な離婚もあるだろう。
どんな離婚の場合であっても、子どもの立場からすれば、虐待等がなければ離婚親の双方と交流出来るのが素直なはずだ。
親が離婚しても、親子は親子である。
要は、これまでの常識を変えればいいだけのことだ。
10年かかるか、20年かかるか分からないが、とにかく日本の常識を変えるために少しだけ動いてみよう。
そう、改めて決意した次第である。