小さな声で言っておこうー日本の国はどこまで国民を護ってくれるのだろうか | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

国民保護法制という言葉を聞いた方はおられるだろう。
それでは、既に国民保護法という法律がある、ということを知っておられる方はどのくらいおられるだろうか。

国民保護という名称が付いているから、テロで人質になっている人に対しては国民保護法で対処するのか、と言えば、そうはならない。
ここで言う国民保護法は、正式には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」だが、確かに我が国がテロ攻撃を受けた場合のことは書いてあるが、日本国民が海外に行ってテロ集団に拉致されたり、人質になったような場合のことまでは何も書いていない。

それでは、日本の国は日本国民がテロ集団の人質になった場合に何もしないのか、何も出来ないのかと言えば、そうではない。

しかし、どこまでのことが出来るか、またどこまでのことをすべきか、についてはまだ暗中模索、五里霧中、試行錯誤、いやそもそも答えを出すことが不能の状態にあるのではないかと思う。

かつて、北朝鮮によって拉致された日本人を救出するために自衛隊を派遣せよ、などという議論をする国会議員もいたが、大方の意見は拉致問題の解決のために自衛隊を出動させることには消極的であった。
多分、今回のイスラム国人質事件でも、日本の自衛隊や警察が具体的な救出活動を展開することには大方の国民は反対するはずである。

人命第一で、人質の救出に全力を尽くす、あらゆる措置を講じる、と政府首脳は言わざるを得ないが、多分私たちには人質救出の術がない。

アメリカの軍人がテロ集団の人質になった場合は、アメリカの軍隊は人質を救出・還するためにあらゆる方策を講じるはずである。
軍人ではない一般の民間人が人質になった場合も、アメリカであれば多分あらゆる方策を講じるだろうと思う。

今、イスラム国と称するテロ組織集団が日本国民を人質にして日本政府に対して2億ドルの身代金要求を突き付けているが、大方の国民は日本政府がこのような要求を到底受け容れることが出来ないことは承知している。
それでは、日本政府は、このまま手を拱いていなければならないのか。

何とかしたいと思うが、どうも何ともしようがない。
答えを出せないことが分かっていて、答えを無理強いしてもそれは酷というもの。
国民保護法という素晴らしい名称の法律はあるが、あらゆる場合に国民を護り切るような方策を定めた法律はどこにもない。

こういう場合にどうすべきか、どこまでのことが出来るのか、については、これからみんなで手探りで答えを探していくしかないだろう。

参考のため、現在ある国民保護法についての日本大百科全書の解説を皆さんにご紹介しておく。

以下、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説を引用:
「国民保護法
こくみんほごほう

正式名称は「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」。平成16年法律第112号。いわゆる有事法制の「個別法」の一つとして、他の関連7法と同時に、2004年(平成16)6月14日に成立し、6月18日に公布された。この法律は全体で11章、195条および附則14条からなる膨大なものである。

法律の目的は大きく分けて二つあり、一つは武力攻撃予測事態および武力攻撃事態(いわゆる有事)の際に、国民の保護のための措置をとるものであり、もう一つは緊急対処事態(テロなど)に対処するための措置をとるものである。

法律の形式としては武力攻撃災害という概念を創出して、災害対策基本法の枠組みを援用しているが、災害対策基本法が災害の特性から地方自治体の自主性に着目してボトムアップの法体系となっているのに対し、武力攻撃災害(戦災)の特性から国家から地方自治体に向けてトップダウンの中央集権的な法体系となっているのが特徴である。

このことは地方分権一括法で地方自治法を改正し、そのなかで国際社会における国家の存立にかかわる事務は国家が分担することとし、それを法定受託事務としたことを受け、軍事は国家の事務であるとされたことにより、この法律に基づく地方自治体の事務は法定受託事務となっていることにあらわれている。また武力攻撃対策本部長(首相)には指示権限が与えられており、さらに内閣総理大臣(対策本部長)には調整機能、代執行権限が付与されており、これらの権限の行使により措置がとられることとなるため国家の指導は担保されており、またそのため地方自治体の裁量の範囲は大枠にはなく、枠内の細部の点にしかない。

戦争に際しては、戦闘で勝利するための軍事行動と、軍事行動を円滑に実施するために非戦闘員(住民)を戦場から排除し、非戦闘員(国民)の被害を最小限に抑える非軍事行動は表裏一体のものであり、自衛隊と米軍の作戦行動のための有事法制と国民保護のための有事法制はワンセットである。この法律はその意味で、戦争に勝利するための非軍事行動にかかわるものということができる。

この法律は具体的には(1)対策本部長による警報の発令とその伝達、(2)住民の避難の措置、(3)住民の避難先での救援の措置(避難所、衣食、医療、生活必需品の供与、安否情報の扱い、遺体の処理など)、(4)武力攻撃災害(戦災)への対処、(5)国民生活安定のための措置(物価統制、金融統制など)、(6)復旧の措置、(7)備蓄、財政上の措置、(8)平時からの訓練の実施などが規定されている。

これらは内閣が決定する国民保護に関する基本指針に基づき、地方自治体がそれぞれの国民保護の計画を立案・整備し、指定公共機関・指定地方公共機関を指定してそれらもそれぞれの業務計画を立案・整備することとされている。

また、もう一つの事態である緊急対処事態(武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する事態で、国家として緊急に対処することが必要な事態であり、具体的には原子力発電所の破壊、生物・化学兵器によるテロ、航空機による自爆テロなど)が発生し、または発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った時には、武力攻撃事態法を準用して対処することとしている。このため、この個別法によって親法である武力攻撃事態法の一部改正が行われている。[松尾高志]」