これは見事な舞台ー靖国への帰還 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

靖国問題を語る人に是非観ていただきたい舞台を観た。
いや、これは靖国を知らない人、靖国を知ろうとしなかった人にこそ観ていただきたい舞台だと思った。

「舞台 靖国への帰還」である。

浅見光彦シリーズの作家内田康夫氏の歴史ファンタジー小説「靖国への帰還」を舞台化した作品であるが、社会問題ディベート型演劇として極めて完成度の高い作品に仕上がっている。
「靖国への帰還」という小説を舞台化するという話を聞いて原作を読んだ時には、一体こんな難しい話をどうやって舞台に出来るのだろうか、と思ったが、やはり演出家の発想は素晴らしい。

昭和20年5月25日に厚木基地から飛び立った夜間戦闘機「月光」に乗っていた海軍飛行兵武者滋中尉がタイムスリップして62年後の日本に戻ってきて靖国について語り、最後は再び厚木基地から「月光」に乗って飛び去ってしまうというストーリーだが、A級戦犯合祀問題、戦没者追悼施設問題、戦争指導者の戦争指導責任問題、総理の靖国参拝問題、政教分離及び公務員等の宗教的活動の禁止問題等々およそ靖国について識者の間で論争となりやすい論点が見事に整理され、かつ網羅されている。

論争にわたる部分は極めて迫真力があって、息が詰まるほどだ。
3時間ほどの舞台だが、演技者の演技がそれぞれに素晴らしく、まったく観客を飽きさせない。
いい役者が揃ったものだ。

靖国への帰還、というテーマから、如何にも武張った社会問題提起型舞台のように思われるだろうが、実はこれはロマンである。
ファンタジーロマンとチラシに書いてあるとおりだ。
男の人は、死んだら靖国へ、などと言う。
しかし、本当にそうなのか、という問いかけが実はこの作品の訴えではないだろうか。

この舞台の最後の方で、武者滋中尉を送り出した当時の女学生のセリフが私の耳に残っている。

愛する家族や恋人のところに帰ってきて欲しい。
貴方が帰って来るべきところは、靖国ではなく、私のところだ。

私にはそう聞こえた。

この舞台が若い方々にどれだけアピールするかは分からないが、人の生き方やあり方を問うファンタジーロマンだと思って、多くの若い方々に鑑賞していただければ幸いである。

この舞台は、今日が初日で、明日15日に昼と夜の部、16日に昼の部が上演されることになっている。
しかし、この舞台が数回で終わるのは余りにももったいない。
大当たりを取って、全国各地でこれから何年にもわたって上演していただけるようになればありがたい。
なお、設定監修をされた元自衛隊幹部の山下輝男氏が簡潔にこの「舞台 靖国への帰還」の感想を書かれていたので、皆さんにご紹介しておく。

参考:①山下輝男氏のブログ http://yamashita.la.coocan.jp/oriori/oriori.htm
   ②舞台靖国への帰還  http://yasukunihenokikan.net/