家族信託で一般社団法人を活用した方がいいと思われる理由 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

これは信託業法の適用があるかどうかで大きく結論が左右されることだが、今のところ家族の財産管理のために家族のみで構成する一般社団法人を設立して、家族の財産をその一般社団法人に信託譲渡することには信託業法の適用は及ばないと解されている。

家族のみで構成する一般社団法人に信託銀行並みの資産や管理執行体制の整備を求め、信託業の免許を取得することを求め始めたら、絶対に信託は拡がらない。
わざわざ信託法を改正したのは、一般の国民が使い易い信託を普及させようという趣旨に出たものだから、実際には利用されないような名目だけの信託制度の改正などするはずもない。

個人に対する信託では、信託者の財産と受託者の財産のいつの間にか混同されてしまう虞があるが、法人を設立すれば少なくとも受託者の個人財産から信託財産を分離することが出来る。
法人の経理は自ずから個人の経理とは分離されるから、経理の明確化という意味では法人の方がいい。
税務当局も個人よりも法人になってくれる方がありがたいはずである。
法人でありさえすれば当然税理士が関与するようになり、経理が合理化されるだろうし、税金申告も毎年行われるようになる。
個人の税人申告をチェックするよりも法人の税金申告をチェックする方が簡単になる。

法人でありさえすればいいのだから、勿論不動産管理会社を設立する、という手法もあるが、不動産管理会社ということになると信託の受託業務は出来なくなるから、不動産管理会社にそう簡単には不動産の所有名義を移すことは出来ない。

家族信託の手法で家族のみで構成する一般社団法人に家族所有の不動産を信託譲渡できる、ということになると、信託譲渡による所有権移転に伴う不動産取得税は非課税だから無用な税金負担が発生することもない。
信託譲渡の場合は実質的な所有権は依然として信託者にあると看做されるから、譲渡所得の課税もない。

家族の誰かに不動産を信託譲渡すると、受託者が信託者よりも先に死亡した場合に面倒なことになるから、個人よりも一般社団法人の名義にしておいた方がいい、ということになる。

相続が発生した時は、一般社団法人に信託譲渡されていた不動産は信託者である被相続人の財産だと看做されて相続税が課されることになっているから、時に相続税の免脱行為として否認されるようなこともない。
小規模宅地課税などの相続税の特別措置も同じように適用されるというのだから、信託業法の適用が及ばないのだったら家族のみを構成員とする一般社団法人を設立して、当該一般社団法人に家族の不動産を信託譲渡すれば、相続に伴う紛争の発生を最小限に止めることが出来るではないか、というのが、家族信託と一般社団法人を活用する争族回避のためのスキームのあらましである。

税金の取り扱いはしょっちゅう変わるから、仮に現時点でそれなりの節税メリットが確認できても将来のことまでは保証できないが、法的な紛争の発生を最小限に止めたい、と思っている方々には役に立つ仕組みである。

勿論こういうスキームを利用するためには一定のコストと事務負担が伴うが、それに堪えるだけの体力と気力、財力がある聡明な方がこういうスキームを利用されればいいだけである。

自分には関係のないことだ、と思っておられる方は、お読みになる必要はない。
念のため。