朝霞の彩夏祭の会場でスイカを拾った方がいる。
クレジットカード機能も付いており、定期券としても使える。
定期が切れるのは1か月余り先のこと。
スイカを落とした方はさぞ真っ青になったことだろう。
一枚の小さなプラスティックカードでしかないが、本物の西瓜よりもズッシリと重く、その価値も半端ではない。
悪い拾い主に拾われたら、悪用されるところだった。
拾い主は、どのくらいの価値があるのか分からないから、ただのゴミ屑や使い捨ての商品みたいな感覚で、散歩の途中でこんなものを拾ったよ、と私たちに示してくれた。
80歳を超えておられる方だから定期券を買うこともなく、スイカも使われないのかも知れない。
あれー、これは大変だ。
落とした人は困っていますよ。
早く落とし主に返してあげなければいけませんね。
交番に届けてあげましょう。
交々にそんな話をした。
2日後にその拾い主の方とお会いした時に、その後どうなったのか尋ねた。
不思議である。
交番に届けて、書類を書いている最中に一人の女性が交番を訪ねてきたそうだ。
すみません、とかなんとか言いながら交番の中に入ってきてお巡りさんに何か尋ねようとしたようだ。
それ、私の定期です。
私のです。
失せ物は、交番に届ける。
LOST $ FOUND
物を失ったら交番に届ける。
物を拾ったら交番に届ける。
そういうことが一般の市民の常識になっている、ということだ。
それにしても落とし主と拾い主がばったりと交番で顔をあわせる、などということは滅多にないことだ。
なにしろ落としたのは前日の花火の晩で、拾ったのは翌朝のラジオ体操の時間のことだから。
失せ物が戻った、というのは奇跡的なことである。
しかし、日本ではこういう奇跡はしょっちゅう起きているようだ。
それだけ日本はいい国である。
私の家人の失せ物もやっぱり戻ってきている。
失せ物の時は交番に行け、ということである。
同じように、困りごとの時は弁護士のところに行け、というのが常識になってくれればいいのだが。
弁護士早川忠孝の雑来帳「ザッツライッ」

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