実は、私も限定的な「集団的自衛の措置」容認論者だった | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

1999年9月13日に発行した「時代に合った新しい憲法を創る」という書物の中で、私が今日の集団的自衛権行使容認論の先鞭を付けていたことを確認した。

まだ国会議員になる前の著作だから国会議員の間でどういうことが議論されているかをよく知らなかった時の著述である。
未熟だったが、それでも当時の憲法学者が一切提起していなかった問題を提起した、という意味ではそれなりに意義があっただろうと思っている。

「憲法第9条は日本の自衛権を否定しているか」という章の中で、私は次のように述べていた。
私の独自な議論だが、皆さんの考えるヒントにでもなれば幸いである。

「〇日本国憲法は最高法規範としては不完全

すでに述べたとおり、「マッカーサー・ノート」には、「国家の主権的権利としての戦争を廃棄する。日本は、紛争解決のための手段としての戦争、および事故の安全を保持するための手段としてのそれをも、放棄する。日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想に委ねる。いかなる日本陸海空軍も決して許されないし、いかなる交戦者の権利も日本軍には決して与えられない」と完全な非武装方針が記載されていた。

しかし、主権国家としての固有の自衛権を否定しようとしていたマッカーサーの当初の企図が、そもそもの誤りであった。国家が国家としての自己保全のために自衛権を有することは、国際法上認められた当然の権利である。他国から強制された結果として、自衛のための戦力の保持も禁止される場合のあることはともかく、完全な国家主権を有している国家が、自らの存立基盤としての自衛権を自由な意思で放棄することはありえない。
(中略)
しかし、憲法の文理解釈自体からは、わが国が当然に国家としての自衛力を保持するという論理が出てこないことも承認せざるをえない。
(中略)
この問題を根本的に解決するためには、憲法の条文を改正する必要がある。
憲法改正が行われないなかで、警察予備隊から保安隊、さらに自衛隊へと発展し、憲法は形骸化してきたのである。
自衛隊の存在を合憲とする合理的かつ説得的理論が国民に提供されないまま、いわばなし崩しの解釈改憲で50年余を経過したため、わが国の憲法は法解釈の最高の拠りどころとしての最高規範性を失い、形骸化・空洞化してきたといえる。

憲法9条2項の形骸化は、制定の経緯からして、もともと憲法が最高法規範として不完全であったことに由来している。憲法はあくまでも占領政策または占領法規の一環として位置づけられ、それゆえ、占領政策または占領法規が変更されれば、変更された占領政策または占領法規に適合するように解釈されることが予定されていた、と考えられないであろうか。

私としては、そういう論理でないと、政府の9条解釈の変遷を合理化できないと思うからである。

〇憲法の上位にGHQの占領法規があった

昭和25(1950)年7月8日、占領軍の最高司令官であるマッカーサー元帥は、当時の吉田茂首相に対し、憲法条項の変更など特別の法的手続きをとることなく、自衛隊の前身となる警察予備隊の設置を指令した。

私は、マッカーサー元帥の指令によって、憲法9条2項は、「ただし、自衛のための必要最小限の戦力を保持し、これを行使することは妨げない」と、ただし書き付きの条文に実質的に改定されたと解釈するのが相当であると考えている。
(中略)

〇日本国憲法イコール条約

自衛権がわが国にあるという憲法解釈は、占領下の昭和25(1950)年に行われたマッカーサー元帥の年頭声明により確立した。自衛隊の存在を合憲とする国民の基本認識の発端は、自衛隊の前身である警察予備隊の設置がそもそもマッカーサーの指示にもとづいているという事実によるものであるといえよう。

憲法の規定に優位する占領政策の変更にともない、昭和25年に憲法第9条2項の文言解釈を占領政策に適合するように実質的改訂がなされた、というのが私の理解である。
いわば、解釈改憲によって憲法が凹んだと解釈している。
(中略)
憲法第9条をめぐって重箱の隅をつつくような神学論争を続けていれば、国際的な問題に対して、どのような方針で臨むのかについて、いつまでも国民的同意が作られないままに終わり、適時適切な対処ができないことにもなる。

もはやこれ以上の解釈改憲は不可能である。国民の憲法意識と実態に適合するよう、国家としてわが国が自衛権を保有することを宣明し、自衛権行使の態様などについて明文化するために速やかに憲法改正等の必要な措置が講じられるべきである。」

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