さて、この高村案は与党合意の落としどころになるか | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

色々なところに知恵袋があるが、衆議院議員にとって役に立つのは衆議院の法制局であり、参議院議員にとっては参議院の法制局である。

内閣の法制局は内閣にとっての知恵袋だったり、時にはお目付け役になるが、衆議院、参議院の法制局は国会議員の法律案作成のお手伝いをするのが役目だからもっぱら知恵袋の役割が大きい。

法制局にはよく勉強する人が多い。
特に国会の法制局は助言に徹しているから、与党も野党も国会の法制局を頼りにする。

面白いのは、与党の議員立法も野党の議員立法も同じ法制局の人を頼りにすることだ。
与党側の議員立法の起案も野党側の議員立法の起案も同じ国会の法制局の人が担当する。
そんな器用なことが、と思われるだろうが、中立公正な立場に徹するとそういう神業みたいなことが出来る。
国会議員がこうしたい、ああしたいという内容をしっかり理解し、他の法律や最高裁の判例、時には諸外国の法制や学説なども踏まえて国会議員が作りたいと言っている法律案のドラフトなどを作ってくれる。

勿論大元は、国会議員の発案である。

ただし、国会議員の漠然としたアイデア程度ではとても法律案にはならないから、国会の法制局の担当者が知恵を絞っていくつかの案を出す。
そのいくつかの案の中から国会議員が自分で一番納得できる案を選ぶ。

大体は、そういう手順で議員立法に係る法律案の骨子が出来上がっていく。
国会議員自体は立案能力が足りなくても足りるのは、こういう知恵袋があるからである。
政治家としてのセンスがある国会議員は、こうやって次から次へと新しい制度を作ることが出来る。

国会の法制局が役に立つのは、議員立法の場合だけではない。

内閣が提出したいわゆる閣法の修正案を策定するときに国会の法制局が活躍する。
衆議院先議の時は衆議院法制局が、参議院先議の時は参議院法制局がその役割を担う。

国会の法制局に人を得れば、与野党がそれぞれ納得するような知恵を出してくれるものだ。
国会議員の知恵袋が国会の法制局である。

閣法の修正案策定作業と似ているのが、与党協議である。

集団的自衛権の容認問題についての与党協議がいよいよ大詰めを迎えているが、与党協議案策定の具体的作業を担っているのは多分衆議院の法制局だろうと思っている。

自民党の高村副総裁から新たな提案があったようである。
集団的自衛権の文言をどうしても閣議決定文書の中に盛り込みたいという子どもっぽい安倍総理の要求に応えながら、集団的自衛権の容認に激しく拒否反応を示している公明党を納得させるような文言を捻り出す、という難しい作業に高村氏らが懸命に取り組んでいる様子がよく窺われる。
そろそろ結論を出さなければならないかしら、と誰でも思うような展開である。

どうやら今通常国会の会期中の閣議決定は見送られることになったようだが、内閣改造の前に閣議決定が行われるのは必至の情勢になった。
最後はエイヤッで決めざるを得ないだろう。

色々なところにいる知恵袋が今まさに大童で知恵を絞っているはずである。

水面下で行われている作業だからまったく表には出てこないが、様々な人が様々なところで今、懸命に知恵比べをしている。
与党協議は必ず成る。
ここまで来たら、決裂はない。
そう思って、どんな与党協議になり、どんな閣議決定の文章になるかを皆さん想像されたらいい。

私だったら、絶対に解釈改憲とは受け取られないような文言をしっかりと書いて、歯止めの措置を講じる。

憲法改正の手続きを経て行われるべきものを単なる与党協議や閣議決定で潜脱するようなことは絶対にしてはならないからだ。
許されれば、与党協議の冒頭にそういう趣旨の文言を明記して、注意を促し、集団的自衛権の独り歩きを防ぐ。

その外にもいくつか方法はある。
これから1週間、10日の間にどんな知恵が出てくるかが見ものである。

参考:6月13日付け日経ニュース抜粋

「高村氏の私案の文言は「わが国に対する急迫不正の侵害があること」と限定していた自衛権の発動要件を「他国に対する武力攻撃が発生」と集団的自衛権の行使にまで拡大した。1972年の自衛権に関する政府見解を援用している。近隣国の紛争から避難する邦人を乗せた米艦を防護するなどの限られた範囲で集団的自衛権の行使を認めることを想定している。

自衛権発動の3要件 【高村氏の新たな私案】
(1) 我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること(従来の案 我が国に対する急迫不正の侵害があること)
(2) これを排除し、国民の権利を守るために他に適当な手段がないこと(従来の案 これを排除するために他の適当な手段がないこと)
(3) 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと(従来通り)

高村氏は協議会後の記者会見で「自公で合意ができたら、政府がつくる見解に入れてほしい」と強調し、同案を集団的自衛権の行使容認の閣議決定の原案とする考えを表明した。

公明党の北側一雄副代表は協議会で「憲法解釈の見直しは一切駄目だというわけでない」と述べた。同党幹部は「高村氏の案をもとに党内をまとめていかなければいけない」と述べ、13日午後にも党内調整に入る考えを示した。

高村氏は17日の次回協議会で、政府に閣議決定の文案提示を求める考えを示したが、北側氏は難色を示した。」

弁護士早川忠孝の雑来帳「ザッツライッ」

弁護士早川忠孝の一念発起・日々新たなり  通称「早川学校」-横バナー


メールマガジンの購読はこちらから

リンクはこちら⇒弁護士早川忠孝の雑来帳「ザッツライッ」