特定秘密保護法案を考える視点 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

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弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

朝日をはじめとして言論界では現在国会で審議されている特定秘密保護法案について反対の立場から論陣を張る方が多いが、さすがにアメリカの世論がこの法案の策定に反対しているといった議論は日本の国民を惑わすような為にする議論だと思うので、鵜呑みにはしない方がいいと思う。

私のこの問題についてのスタンスは既に書いたつもりだが、当時はまだ与党協議が整っていない段階だったので読者の皆さんの記憶には残らなかったようだ。

特定秘密保護法の制定に反対することは難しい。

外国政府との情報共有の必要性が高まっているのに、当該外国では当該情報の漏出に備えて厳重な法制を布いているのに、日本に当該情報を提供したらその時点でもう秘密として保持することが出来なくなる、というのでは国際社会の安寧秩序を維持することが著しく難しくなる。
特定秘密保護法の制定はアメリカ政府が日本に求めている日本とアメリカとの間の情報共有システム構築のための重要なインフラの一つだと思われるので、アメリカの世論が我が国において特定秘密保護法を制定することに反対なり異議を述べているかの如き主張はどうしても信じられない。

国家秘密法制定問題が登場した当時はかなり乱暴で粗雑な議論が罷り通っており、国家秘密法の制定に反対するのは、報道の自由と権利の保障、国民の知る権利の保障、一般国民の保護等の観点から十分理由があったと思うが、現在審議の対象となっている特定秘密保護法案は当時とはかなり趣を異にしている。

私の基本的スタンスは、①処罰規定の創設は出来るだけ慎重に、②新設犯罪の構成要件は出来るだけ主観的要素を取り除いて、客観的かつ明確に、③報道の自由と権利は絶対に侵害しない、④国民の知る権利との調整は司法機関ないしこれに準じた第三者機関を介在させて合理的に、⑤何が特定秘密に該当し何が該当しないのかの判断基準は客観的かつ合理的に、ということである。

国会で法案の問題点を徹底審議し、出来るだけ疑義がないようにすることが大事である。

反対のための反対、総論部分だけの議論に終始し、法案の細部についての突っ込んだ議論をしないまま裁決手続きに移ると、本当の問題点を炙り出さないまま、本当の問題点に対して具体的な対策を講じないままに終わってしまう。
これでは何のための国会審議か分からなくなってしまう。

マスコミや日弁連が反対の論陣を張って特定秘密保護法の恣意的運用や濫用、さらには過剰な規制の導入に警鐘を打ち鳴らし、国民を護るための防御線を布くことには意義があるが、この法案に反対しているだけでは特定秘密保護法の成立の阻止は出来ない。
本当の問題点の炙り出しとポイントを絞った修正案の提示こそが今マスコミや日弁連に求められていることだと思う。

物事が上手く行かない事態、懸念事項を数え上げればそれこそ5万と出てくるだろうが、これを全部述べ立てているだけでは自己満足に終わってしまう。
ポイントを絞るべきである。

党内手続きを終了していると与党の国会議員が法案の本当の問題点を指摘するのは難しいから、ここは野党の国会議員がその力を存分に発揮するところである。
何が特定秘密に該当するか、ということだけに関心が集中すると精々が裁判所によるインカメラの採用と相当期間経過後の情報公開の制度の整備で終わる。

多分特定秘密保護法の運用に当たっての本当の問題点は、いわゆる共謀罪の創設に関する部分だと思われる。
この種の議論が得意な人が現在の主要野党の国会議員にどの程度いるのか分からないが、国会で見応えのある審議がなされることを期待している。

私のブログの読者の方から、下記のブログについての私の感想を書いて欲しいというリクエストがあったので、とりあえず本項を書いておく。

参考:2013.11.09
特定秘密保護法案について(つづき)
http://blog.tatsuru.com/