福岡高裁が法律上の明文の規定がないのに永住外国人に対しての国の生活保護義務(永住外国人の生活保護受給権)を認定したことについては、少々異論がある。
生活保護行政全体がどうも緩んでいるのではないだろうか。
勿論、いざという時のセーフティネットとしての生活保護は重要であり、「権利としての生活保護」という理念を普及させることの意義は理解しているが、生活保護が大手を振って歩いているということについてはどこかで釘を刺しておいた方がよさそうだ。
こんなことを書いてもネット世界の住人の方々からは大したブーイングはないだろうと思ってはいるが、選挙を抱えている人は、生活保護の現場の問題に気が付いていていながら口を閉ざしていることが多いものだ。
あえて問題提起のつもりでこの一文を書いておく。
本来生活保護は日本国民に対するものであって、外国人が日本で生活しているからといってその生活の保護を日本国が当然に引き受けることはない。
日本国民であろうと外国人であろうとまずは自助努力が重要であって、生活保護は、生活困窮者の生活をそのままに放置しておくと治安が乱れ反って社会不安を助長するなどという特別の事情があることなどを考慮しての例外的な措置だろうと私は理解している。
国際化の進展に伴って日本国民が海外で生活することが多くなり、日本の国民が海外で生活困窮の状態になった場合に外国政府から日本国民に対する扶助をしてもらう見返りとして日本政府としても日本に在住する外国人に対して相互主義の観点から生活保護を認める、ということはあっても、その政策決定についてはタックスペイヤーである国民の声を聞くことが大事である。
判決文そのものを読んでいないので、福岡高裁がどういう論理で国の生活保護義務なり永住外国人の生活保護給付請求権の存在を認めたのか分からないところがあるが、司法と行政、さらには立法のそれぞれのあり方を考えるち、この福岡高裁判決は少し立法作用に踏み込みすぎているように思う。
これは、優れて立法政策の問題である。
法律上の明文の規定がないのに裁判所が厚生省のかつての行政上の通知や行政指導を根拠に永住外国人の生活保護受給権を認めたことは問題だと思うが、如何だろうか。
皆さんのご意見をお伺いしたいところだ。
参考 産経新聞配信記事
「永住外国人も生活保護の対象 福岡高裁が認定
2011.11.17 09:36 [地方行政]
生活保護の申請を却下した大分市の処分は違法として、永住資格を持つ中国籍の女性(79)=大分市=が却下処分の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁の古賀寛裁判長は15日、「永住外国人らも生活保護法を準用した法的保護の対象だ」として却下処分を取り消した。原告側の逆転勝訴判決。
原告弁護団によると、現状では行政措置として実施されている外国人の生活保護を、法的保護の対象と認めた判決は初めて。
生活保護法は対象を日本国民と規定する一方、旧厚生省は昭和29年、外国人を同法に準じて扱うよう通知。平成2年、対象を永住外国人に限定するよう自治体に指示した。
判決理由で古賀裁判長はこうした経過や、国籍条項がある他の法律は改正されたが、生活保護法は通知による運用継続を理由に改正が見送られたことなどを挙げ「一定範囲の外国人が、生活保護を受給できる地位を法的に保護されている」と指摘した。」