控訴の勧め | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

何事も程々ということはある。
執行猶予付き禁固刑判決で内心ほっとした人もいるかも知れず、あえて問題提起をしないでもいいか、と思う点も無きにしも非ずだが、事案の性質上誰も指摘しないのではバランスを欠くだろうと思い、あえて当事者にとっては耳にしたくもないだろう辛口のコメントを書いておく。

時事通信が、「小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、虚偽記載罪に問われ、一審東京地裁で有罪とされた元秘書の衆院議員石川知裕被告(38)の弁護人は27日、判決を不服として東京高裁に控訴した」と報道している。
元公設第1秘書大久保隆規被告(50)側も控訴する意向だということだから、おそらく今日中に控訴するだろう。
ということであれば、検察もここは控訴するのが筋であろう。

今朝の新聞各紙に載っている判決要旨を読んだが、大久保被告と石川被告について何故執行猶予としたのか理由が今一つ釈然としない。

あれだけ事案の悪質性を指摘し、しかも石川被告らが隠蔽工作を行ったという事実を認定しながら、あえて情状を酌量して両被告を執行猶予にしたのかが分からない。
前の事務担当者が編み出した方式を踏襲しただけだから悪質ではないと判断したのなら、ちょっとその理由付けには異議がある。
積極的な仮装・隠蔽工作は事案の悪質性を示すものであり、ある意味で虚偽記載、不実記載、記載の脱漏よりも性質が悪い。

虚偽記載、不実記載、記載の脱漏と言っても千差万別。
違法は違法であっても、金額の多寡に限らず違法性が軽微だということはあり得る。
しかし、隠蔽工作は法の適用をことさらに免れようとして意図的に行うものであるから、違法性や反社会性の認識がそれだけ高いという証拠である。
隠蔽工作があってもそれほど悪質ではないと判断する根拠をどこに求めるか、というのは一つの重要な法律問題になる。

事案そのものの悪質性を指摘しながら、それでも情状酌量すべき事案であるということをもう少し丁寧に説明する必要があると思料するが、如何であろうか。
少なくとも、いつ、誰が、何故、どんな態様で隠蔽工作を行うことにしたのかを徹底的に検証しすべての事情を明らかにしたうえで量刑の適否を決めるべきであると思う。

判決が認定している事実関係を前提にすると、執行猶予にしなければならなかった理由の理屈付けがどうも弱い。

石川被告と大久保被告が控訴するのだったら、バランスの上でも検察庁も控訴するのが筋である。
もっとも、もう一人の元私設秘書池田光智被告(34)は「今後の対応は協議して決める」としているようだから、無理に検察側から控訴する必要はないと思うので、念のため付言しておく。