これまでは、あえて自分が総理大臣として決断を迫られることはない、ということで、あくまで問題点の指摘や別の観点からの問題点の整理に止めておいた。
この問題が簡単には結論を出せないような難問中の難問になる、という予感は以前からしていた。
だから、臥薪嘗胆という言葉を持ち出し、この問題を上手に棚上げする方策の提案などしてきた。
しかし、この問題を上手に処理する方法などなかったのだ。
いくら考えても出口がない問題に逢着した、という結論だ。
しかし、ここで総理大臣に擬せられたのだから、苦しくとも答えを考えなければならない。
答えを出す前提条件として、まず、釈放処分はあくまで検察官の司法判断によるもので、政府が司法の判断に政治介入して出した、という答えは最後まで出さないものとする。
さらに、尖閣諸島は日本の固有の領土であり、日中間には領土問題はない、という日本政府の建前は崩さないものとする。
日中両国の共同の利益となる事業を見つけて、共同事業に早急に着手する協議を始める。
日本と中国が対立することにより、中国の具体的な利益が決定的に損なわてしまうようなことを早急に見つけて、日本と中国との協働の必要性を中国政府と中国の国民の双方に理解させ、その理解を末端まで浸透させることに全力を尽くす。
中国国内におけるさまざまな政策課題のうちに占める尖閣諸島の重要性の順番を決定的に後ろに下げさせるための新たな方策を探る。
そんなところだろうか。
一種の目くらまし、ではある。
そんなものはない、とても考え付かない、という答えが政府関係者から返ってきそうだが、これまでの固定観念を払拭して考え直せば何か出てくるのではないか。
白樺の掘削など、テロ攻撃に遭えば一番無駄になる可能性のある事業だ。
中国政府は、少数民族問題や貧富の格差拡大問題などを抱えている。
いくら強大な軍事力、警察力を有する一党う裁国家であっても、いつ、どこで、どんな暴発事件やテロ被害に遭うかもしれない状況になってもおかしくない、とう要因を抱えている状況を考えれば、治安が安定して穏健で、世界で最も危険性が少ない日本人と協力してテロ対策などを実施する、ということはいいことかも知れない。
中国は広大な領土と巨大な人口を抱えているために、強大だが、同時に弱いところもある。
全国各地で洪水の被害や地震の被害に遭っているようである。
砂漠化の進展で苦しんでいる地方も多いはずだ。
新たな環境プロジェクトに乗り出すために日本の協力を期待している面もあるのではなかろうか。
中国のニーズを的確に把握し、中国政府との共同事業に精力的に取り組む、日本の協力なくしてはこれらの事業がまったく進捗しないような高度の技術開発に早急に取り組む、などのことも考えられるのではなかろうか。
私は、その方面での知識も知恵も持ち合わせていないが、その道の専門家であれば知恵が出せるのではなかろうか。
私が総理大臣だったら、緊急に中国問題対策本部を設置し、衆智を集めて、いつまでに何をやるべきか、の答えを出させるところだ。
この問題については、即効力のある処方箋は示せない。
しかし、総理のメッセージの出し方一つで流れを変えることは出来る。
私は、そう思っている。