敗因 | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

色々な意見はあろうが、私は、自分に与えられた条件の中では最大の努力を尽くしてきた。

しかし、あれほど努力したのに、なぜ無党派層の方々の心を捉えることができなかったか。


基本的には、自民党が民意を読み違え、独り善がりになっていたところが咎められたのだと思う。

4年前の郵政民営化解散総選挙で圧倒的な勝利を収めたことに胡坐をかいて、自民党の中での議論だけで様々な政策転換を図ってきた。

その政策転換にはそれぞれ理由があり、自民党所属の国会議員としては納得せざる得ないものではあるが、少しずつ政策転換を図っているうちに、手続き的にも結果的にも民意を無視ないし軽視するようになっていった。


民意との乖離を正すための十分の努力を尽くしてこなかったことに、私の敗因がある。


この場合の民意とは、何か。

茫漠としているが、いわゆる世論調査に示された世論ではない。

ただ好きか嫌いか、のアンケート調査で簡単に分かるようなものではない。

賛成か反対か、の巧妙に仕組まれたアンケートによって示されたアンケート調査結果でもない。


民意は、大事な問題について自分の意見を表明し、自分もその決定のプロセスに参加したい、という国民の意思である。

国家としての基本政策に関わる部分について国民に意思表明の機会を与える、ということを疎かにしたところに、そもそもの問題がある。


平成17年の郵政民営化総選挙で首班指名された小泉元総理は4年間内閣総理大臣としての職務に専念することを国民に約束すべきだったのに、郵政民営化事業だけを自分の仕事と割り切り、教育基本法改正等の教育改革、防衛庁の省昇格、憲法の改正手続きのための国民投票法等の制定、拉致問題の解決などの大事な仕事を安倍晋三官房長官に委ねて退陣してしまった。


小泉総理が3分の2条項を使ってこれらの大事な国家的課題に決着を付けたのであれば、国民の意思を無視している、とか、強行採決だ、などという批判はあれほど拡がらなかっただろう。

自分たちが選んだ総理大臣の決定だから、まあしかたがない、ぐらいで納まったかも知れない。


自民党の党則に問題がある。


国会議員の選挙と自民党の総裁選びがまったく連動していない。

総裁の任期を3年などと中途半端に設定してある。

総理大臣の任期中に自民党の総裁の任期が満了すると、そこで内閣総理大臣の職を辞任しなければならないようなルールにしてある。

そこが問題である。


自民党の党則は、どうも民意の反映、民意の吸収に疎い。

これでは、内閣総理大臣の顔を自民党の都合で次から次に変えている、と批判されても止むを得ない。

国会の衆議院選挙の結果は、手続き的に民意を問うべき時に民意を問わないで来たツケが一気に表面化したものだ。


そう見た方がいい。


郵政民営化反対議員の復党問題から今日の破綻を予測すべきであった。

小沢氏の与党潰し戦略に対抗できる唯一の人材、小泉純一郎が任期の途中で退陣したことが最大の敗因である。

その後の安倍退陣、福田退陣もその延長上にしかない。


最後に引き金を引いたのが、昨年9月の小泉純一郎氏の親馬鹿発言であった。

これで小泉改革派の足下が大きく乱れた。

旗印を失ったまま戦いに臨まなければならなかったのだから、これでは一般の有権者、特に無党派層、浮動票といわれる方々の心を掴むことは難しい。

個人の努力では越えられない、大きな壁が立ちはだかっていたのである。


麻生内閣の功罪については言わない。

お気の毒、の一言である。

就任即解散を予定したのに、世界経済の急変に対処せざるを得ず、ずるずると民意を問うべき時期を先送りしてきた。

沢山の仕事をこなし、多くの成果を残してきたが、民意を問う時期を誤ったためにすべての成果が水泡に帰した。

こんな気の毒なことはない。


私は、自分に与えられた仕事を何とかして仕上げたい、という思いで一貫して衆議院の解散に反対し、任期満了選挙を主張し、さらに選挙の前には必ず総裁選挙を前倒しして行うことを提言してきたが、基本において間違えていた。


麻生総理に任期満了選挙を期待したことが、まず間違い。

小泉総理が退陣を決めた時に総選挙を行うべきであった。

安倍総理が退陣を決めた時に総選挙を行うべきであった。

そして、福田総理が退陣を決めた時に総選挙を行うべきだった。


民意との乖離がどんどん拡がってきた結果が、これである。

ついに起死回生の一手は打たれず、奇跡は起きなかった。

当然の結果である。