姉歯事件から追い出し屋まで | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

巻頭言(原稿)


この度、「危機と戦う!セーフティネット政策議員連盟」の有志でこれまでの活動記録を纏めて出版することになりました。

セーフティネット政策という言葉が、新しい時代の政治のあり方を予感させます。

危機と戦う!という言葉を冠することで、これからの政治家の基本姿勢や若い国会議員のこれからの政治行動のあり方が見えてきます。

良くぞこういう名称を考え出したものだ、と発案者の片山さつき衆議院議員にまずお礼を申し上げたいと思います。


すべては、平成17年11月の姉歯元一級建築士の耐震強度偽装事件から始まった。

私は、そう思っております。


姉歯事件がマンションやホテル等の集合建築物の安全性に対する信頼を一挙に失わせました。

一級建築士がいい加減な構造計算書を作成し、殆どノーチェックで建築確認を取っている。

そういう事件でした。

建築確認制度や日本の建築行政に対する信頼が大きく揺らぎました。

連日のマスコミ報道で国民の関心が高まり、ゼネコンや国土交通省さらには政治家を巻き込んでの大スキャンダルに発展するのではないか、と思われるような様相を呈しておりました。


政治の立場でも早急に真相の解明を行い、必要な対策を講じなければならない、ということで自民党の中に耐震偽装問題対策本部が設置されました。

当時私は自民党の副幹事長に就任したばかりでしたが、武部勤幹事長のリーダーシップの下、実際の行動部隊として、私を座長とする耐震偽装問題対策検討ワーキングチームを発足させました。

平成17年12月のことでした。


まず事実関係の究明を行い、法律的な問題点を明らかにし、そのうえで必要な対策を講じなければならない、ということで、弁護士出身の若手議員を中心にしてチームを組みました。

柴山昌彦衆議院議員に副座長を、牧原秀樹衆議院議員に事務局長をお願いしました。

いずれも公募で自民党の公認に選ばれた新進気鋭の議員です。

柴山議員は平成16年の衆議院補欠選挙で当選し、牧原議員は平成17年の郵政解散選挙で当選した若手中の若手です。

特に牧原議員は、日本の弁護士であるとともにニューヨークの弁護士資格も持っている国際派弁護士で、しかも任期付き公務員として経済産業省でWTO等の交渉の第一線にいた行政の実務経験もある議員です。

私は、かねてからその仕事ぶりを注目しておりました。

この人がいれば、必ずいい仕事が出来る。

そういう予感が、私にはありました。


まず、いつ倒壊するかも知れない耐震強度の著しく低いマンションの住民の方々の避難を急がなければならない、ということで、連日のように各地を訪問し、被害マンションの実情調査を進めるのと同時に、被害住民の方々や行政の担当者と話し合いの場を設けました。

住民の方々とのお話を通じて、様々な不安や、行政に対するご要望をお伺いすることになりました。


耐震偽装問題対策検討ワーキングチームがいつしか自民党の政策提言の要の役を担うようになりました。

4度にわたる緊急提言の取り纏めを行い、その後の建築基準法の改正、建築士法の改正、住宅瑕疵担保責任履行確保法の制定などを導く牽引力となりました。

年末年始を返上しての取組みとなりました。

よくあれだけ動けたものだと思っております。


まず行動。

現場主義に徹する。

住民の方々の声にしっかり耳を傾け、様々な要望を国会議員が整理し、問題点を明らかにした上で担当の役所に連絡し、行政において必要な対処を求める。

立法措置が必要なものについては、立法提言として取り纏め、党内の手続きを経て法改正に結びつける。

委員会の質疑を大切にし、継続的に問題を取り上げ、必要な対策の実行と、より一層の対策の充実を求める。

さらに、対策がどこまで進んでいるのか検証を怠らず、常に政治の側から発信を続ける。


だいたいこういう政治のスタイルが確立しました。


単独でも行動を惜しまないが、出来るだけ集団で行動する。

これが、現在の自民党の若い国会議員の姿です。


昨年9月にリーマンブラザーズが倒産し、アメリカの深刻な金融危機が表面化しました。

やがては日本の経済に波及してくることが必至で、迫り来る金融危機、経済危機に対処するためのセーフティネットの整備の必要が叫ばれるようになりました。


その頃、財務省で主計官を務めていた経験のある片山さつき議員から私に、緊急経済対策を検討するための新しい国会議員の会を作って欲しい、との要請がありました。

そこで、牧原議員に事務局長就任をお願いして立ち上がったのが、この「危機と戦う!セーフティネット政策議員連盟」です。

当初はセーフティネット政策勉強会として発足しましたが、活動の継続性を確保するために議連にすることにしました。

私が会長、奥野信亮衆議院議員が会長代理、片山議員が幹事長、牧原議員が事務局長を務めております。


日比谷の派遣村に単身で乗り込み、雇用問題に取り組んでいた井澤京子衆議院議員、消費者庁設置問題に取り組んでいた森雅子参議院議員、多重債務者問題や消費者問題に取り組んでいた丸川珠代参議院議員、ワーキングプア問題や介護問題に取り組んでいる阿部俊子衆議院議員などが相次いで議連の活動に参加しました。

よくぞこれだけのメンバーが集まったものだ。

一人ひとりの活動の状況を知るにつけ、改めて感動を覚えております。


当初は、派遣村の問題を取り上げ、雇用のセーフティネットについて検討してきました。

その内に、片山議員を介して、静岡のハウスメーカー富士ハウス倒産事件の被害者の方々から議連に対して救けを求める声が上がりました。

これが一段落したと思ったら、今度は、川口にある注文住宅建築会社であるアーバンエステートの倒産で路頭に迷っておられる方々から救けを求める声が届いてきました。

弁護団の結成に力を貸して欲しい、ということです。

牧原議員や地元選出の新藤義孝衆議院議員の尽力で弁護団が結成され、国土交通省との接点も出来上がりました。


アーバンエステートの被害者の方々からのヒヤリングを続けていると、今度は、報道で議連の活動を知った群馬の、花菱という会社に建築費用を支払ったが、会社が倒産し、経営者が逃げてしまい、どうしたらよいか分からないで戸惑っておられる被害者の方から連絡があり、議連として自分達の窮状を聞いてもらいたい、という要望が寄せられました。

全国各地で様々な問題が起きている。

政治家は、こういう問題に手を拱いて見ているのではなく、自分達のできる範囲で動かなければならない。

そう私達に痛感させるような一連の流れです。


時代が私たちを求めている。

私は、そう思います。


そして、今度は追い出し屋です。

すべてが国民の安心に関わる大事な問題です。

セーフティネット、という言葉がすべてに関わっている、ということがよく分かります。


この通常国会で消費者庁・消費者委員会設置法が成立しました。

いよいよ今年の9月には、新しい時代を迎えます。

生産者中心の日本の政治や行政が、これからは消費者、国民本位の政治や行政に変わります。

その時代の大きな転換点に、私たちは立ち会っています。

「危機と戦う!セーフティネット政策議員連盟」の所属議員が大きな役割を果たしてきました。

そのことを、記録に残しておきたいと思います。


今、新しい時代が始まりました。

そして、私達の活動は、始まったばかりです。

「危機と戦う!セーフティネット政策議員連盟」の活動がこれからも長く続くことを心から祈念し、挨拶に代えます。


平成21年8月吉日

 危機と戦う!セーフティネット政策議員連盟

   会長 早川忠孝