主権免除条約などという言葉を聞いて条約の内容をすぐ理解できる人は、さて日本に何人いるか。
外国等に対する主権免除に関する法律案などと表現すれば、すわ何事か、ということにもなろう。
日本の企業等と外国の政府や機関との間に賃貸借契約や売買契約などを巡って民事紛争が発生した場合に日本の裁判所に管轄があるのか、日本の裁判権が及ぶ場合と及ばない場合を国際条約の規定に合わせて明示しようという趣旨で、主権免除に関する法律案の策定が進められていた。
「主権免除」は国際法の世界では定着した概念のようだが、どうにもなじみがない。
法律実務家である私にもピントこない。
「主権」を、民事裁判権と改めることにした。
「免除」という文言を法律案の名称から削除することにした。
「外国等に対する民事裁判権に関する法律案」ということにした。
うん、これなら法律の中身と名称が一致する。
昨日の与党国対への説明までに法案の名称を巡って議論した成果が、早速形になって現れた。
議論するだけでは、ダメ。
どんないい提案でも言っているだけではダメ。
これを実現することが出来なければ、いつまでもただの評論家に終わってしまう。
素人の素朴な、「これ、よくわかんないよ。」が政治を変える。
国民に分かりやすく、納得して貰えるように様々に工夫する。
これが、国民に基盤を置く、ということの本質だ。
たかが法律の名称。されど名称。
以前、「法例」という法律があった。
これを、「法の適用に関する通則法」と名称変更させた。
内閣法制局が渋っていた改正を自民党の法務部会の議論で修正させた。
素人ではあるが、法律実務家である私の素直な感性が、こんな風にして日本の制度を変えて行っている。
政治は、結果を出すことが命だ。
反対、反対で、何も結果を出せない、むしろいい結果を出すことを妨害するためだけの政治行動は、少なくとも今はいらない。
日本にとって、有害だ。