うっかりすると、とんでもないことになる/社会保険庁解体問題の裏側にあるもの | 早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

早川忠孝の一念発起・日々新たなり 通称「早川学校」

弁護士・元衆議院議員としてあらゆる社会事象について思いの丈を披歴しております。若い方々の羅針盤の一つにでもなればいいと思っておりましたが、もう一歩踏み出すことにしました。新しい世界を作るために、若い人たちとの競争に参加します。猪突猛進、暴走ゴメン。

大切なものを失ったときは、誰しも落ち込むもの。

一日に何度も通夜や告別式に出ると、さすがに気が滅入る。

昨日のブログは、そういうことが相次いでいる最中に書いたもの。


人生の無常を知り、人の無力、に打ちのめされているときは、どんなに虚勢を張ろうとしても空元気に終わる。

そういうときは、素直に自分の無力感を告白するに限る。

多くの方からコメントを寄せて頂いた。


自分でもこんな否定的なニュアンスの文章を公衆の面前で披露するようなみっともないことは、できるだけしたくないのだが、多くの方のコメントを読ませて頂きながら、これはそのとおり、これはちょっと違う、この人にはどう説明したら納得してもらえるだろうか、ほう、裁判員制度についてかなり深く理解しておられる方がいるな、などと思いながら、段々自分に力が蘇ってくるのが分かる。


こういう繰り返しの中で新しい読者登録を頂いた。


一番力を頂戴するのが、こういう時のメッセージである。

本当にありがとうございます。


さて、洞爺湖サミットが最終日を迎える。

懸念されたテロも起きず、反グローバリズム団体による目立った抗議行動や妨害活動がなかったのは幸いである。

これで、世界でもっとも治安の良い国という評判を取り戻すスタート台に立てるかも知れない。

私も、自分をリセットして、新しい課題に挑戦していこう。


そう思っている矢先、厚生労働部会・社会保険庁改革ワーキンググループの合同会議が開催された。

通常国会が終了しサミットに目を奪われていたら、その合間にとんでもない動きが水面下で進んでいたことが明らかになったのである。


これは、まさにほっとけない。


今朝の新聞各紙には、自民党で議論が百出し、差し戻しになった、としか出ていないため、問題の所在が一般の国民には分かり難いだろう。

私の理解する範囲で議論を紹介しておく。


社会保険庁を解体し、日本年金機構を設立することが決まっている。

その日本年金機構の新しい組織体制や業務のあり方、職員採用の基本方針等、当面の業務運営に関する基本計画が、私たちの知らない間に閣議決定されようとしていた。

内閣官房に設けられた年金業務・組織再生会議が6月30日に最終整理という文書をまとめており、これに基づいて閣議決定をしようとしていたのである。


閣議決定されてしまえば、後で自民党の中で議論をしても後の祭り。

多くの国民の声を閣議決定の中に反映する道が閉ざされてしまう。

衛藤部会長が厚生労働部会と社会保険庁改革ワーキンググループの合同会議を開催しなければ出し遅れの証文になるところだった。


国民の年金制度に対する不信を招いた社会保険庁を廃止する、ということは既に法律で決まっている。

社会保険庁の役所ぐるみで年金資産を食い物にしてきたことが明らかになっていた。

グリーンピアなどという赤字垂れ流しの施設を作り、その運営法人に社会保険庁の職員が天下りをして高額の給与や退職金を受け取っていた。

自治労の所属する国費協議会という労働組合と幹部職員の間で違法な闇協定を結び、組織的なサボタージュが行われていた。

社会保険庁改革を進めようとする政治家の年金保険料納付記録を覗き見し、年金保険料の未納情報をマスコミや一部野党国会議員にリークし、改革潰しをやろうとしていた。


などなどの事実が明らかとなっていた。

社会保険庁の組織そのものを解体しなければ、とても国民の信頼に足りる年金制度の再構築などできない。

そういう思いから、社会保険庁を解体、廃止することにしたのである。


単なる看板の書き換えに終わったり、いわゆる焼け太りにならないようにしなければならないことは、当然である。


数々の不正に関与した職員を新しい機構に採用するようなことはしてはならない。

国民の監視、国会の監視の中で全く新しい組織にしていかなければならない。


これが自民党としての意志であった。


ところが、役所が改革の原案を作るので、うっかりしていると改革を骨抜きにするような文言を滑り込ませようとする。

それが端なくも明らかとなってきた。


以下、基本計画案にある文言を引用しながら、簡単に問題の所在を指摘しておく。


「厚生労働省から機構の役員、上級幹部を登用する場合は、ノーリターンルールを基本」


要するに、厚生労働省から年金機構への天下りを予定している、ということである。

これでは、監督官庁の厚生労働省と新しい年金機構との間の緊張関係は保てなくなる。

やがて、ずぶずぶの関係になってしまうではないか。


「公的年金業務に対する信頼回復のため、懲戒処分者は正規職員に採用されない。」


つまり、正規職員としては採用されないが、有期雇用職員としては採用できる、ということである。

懲戒処分の対象にはならなかったが、社会内規で訓告等の処分を受けた職員の身分はどうなるのだろうか。


「有期雇用職員の正規職員化の道も開かれるべきであるが、懲戒処分者を正規職員に採用するときは、第三者

の公正かつ厳格な審査を行う。」


つまり、懲戒処分者もやがては正規職員になれる道を作る、ということである。

これでは、尻抜けであろう。


「機構の必要人員数

機構設立時(2010年) 正規職員   10,880人程度(うち、1,000人程度は外部採用)

              有期雇用職員 6,950人程度(うち、1,400人程度は削減予定数を有期雇用化)」


つまり、約1万人は社会保険庁の職員を採用する。有期雇用の6950人を含むと、1万7830人程度の色委員の大多数が解体される社会保険庁の職員で、新しく採用される1000人は年金機構の中で肩身が狭い思いをせざるを得なくなる、ということだ。

これでは、看板の書き換えに終わってしまう。


「ITのシステム開発・管理・運用に関する事務の権限・責任・人材は機構に集中。国は必要最小限の関与」

「既存の外部委託に加え、届書等の一次審査、厚生年金・健康保険の電話照会、国民年金の免除勧奨、厚生年金の納付奨励、年金相談センターの運営、バックオフィス業務を新たに外部委託」


新しい年金機構に対する国や国会の関与の余地がどんどん縮小し、年金機構の業務は外部委託によってどんどんスリム化する、ということか。

これって、焼け太りになるんじゃないの。


その他、次のような指摘が相次いだ。


歴代の社会保険庁の幹部の責任問題の追及は、どこに行ったのか。

ボーナスの返上はどうなったのか。

闇専従職員の告発はどうなっているのか。

退職金の通算規定はおかしいのではないか。

これだけ大事な内容なのに、部会の審議を経ないで閣議決定しようというのは、おかしい。


やはり私たちは、具体的な課題を目の前にしないと燃えない人種のようだ。

段々みんなの声が大きくなってくる。

国会休会中であるが、昨日の審議のために皆党本部に駆けつけてきている。

私を含め、柴山、牧原、古川の埼玉選出の弁護士出身の国会議員は全員出席し、しっかりと意見を表明している。


これだけの声が上がれば、差し戻しになるのは当然だ。

うっかり、が、がっかり、にならないように、しっかり、仕事をしていきたい。


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