それからは、腰の痛みと胸の痛みの混合で辛かった。
時折、硬膜外の麻酔を強めてもらって眠りに落ちるが、意識が戻ると腰と胸の痛みが押し寄せてくる。

腰の痛みはいわゆる腰痛だろう。
看護師さんに痛みについて話をする余裕もない。
どうせ、手術後は痛いのが当然なのだろうし、とりあえず、話すのが億劫なくらい痛くて疲れる。
時間が経てば体が傷を治して痛みが引くはずだと思って、ただひたすらに早く時間が過ぎるのを待つ。
時間の経過を期待する。
痛くて深く眠る余裕もないので、看護師さんに時間を聞くことだけが楽しみだった。

でも、なかなか時は過ぎていかない。
今何時ですかと尋ねると、夜の10時です、夜中の2時、明け方の4時、朝の5時となり、ようやく朝の6時に起床時間となって、病室の電気が明るくなった。
その間も腰の痛みをなんとかしようと、足をいろいろ動かすが足を少々動かしたところで、腰の痛みは良くならない。
でも、時間はたっぷりあったから、意味が無くても必死になって足を何度も動かして腰の痛みを除こうと無駄な努力をした。

夜の9時と夜中の2時くらいに体の向きを変えるために看護師さん2人がかりで、私の体を動かして、床ずれ防止の体位変換をしてくれた。
腰の痛みが和らぐので凄くありがたかったが、胸に響くので、胸の痛みは一時的に増す。
しかし、腰の痛みはまたすぐにぶり返してくるから、やっぱり無駄に足を動かしたくなる。

1度目の体位変換の時は左側が下になるように、体位変換をしてくれたので、2度目は右側が下になるようにお願いしたところ、これが失敗で、右側の傷口に圧力がかかるようで、胸の痛みが増すだけだった。

痛みの中で工夫したのは呼吸の仕方だ。
胸の手術をしたため、呼吸がしにくい。
息を大きく吸い込むことが出来ない。
大きく吸い込むと痛いから自然と呼吸は浅くなる。
でも呼吸が浅いとそれはそれで息苦しい。
少し呼吸が乱れると息苦しいから常に呼吸をリズム良く整えようとする。
鼻で二度軽く息を吸うとそれだけで胸がいっぱいになるので、さっと鼻から息を出す。
その繰り返し、ひたすらそれを繰り返す。

酸素マスクをしていたから充分酸素は取り込めていたはずなのに、起きている間はずっとそれだけを意識していた。
寝ている時は意識しなくてもきちんと呼吸ができているのだから意識しなくても問題はないのだろうが、必死に息をしていた。